氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
エラがスカートのすそを気にしながら、腰を落としてハンカチを拾う。その女性らしい動きを、ヨハンはくぎ付けになったように目で追っていた。
ハンカチを手にしたエラは「まあ!」と感嘆の声を上げた。先程は気づかなかったが、そのハンカチには見事な刺繍が施されている。
色鮮やかな花が描かれた緻密で繊細な刺繍は、見事の一言だった。その刺繍にはエラが知りえないような複雑なステッチが使われているようだ。
「カーク様……こちらの刺繍は一体どなたが……?」
思わず広げて隅々まで観察してしまう。見たところ大量生産される既製品ではなく、明らかに個人が刺したと思われる一点もののハンカチだった。
貴族女性が手慰みに刺繍を刺すことはよくある話だ。ヨハンの身内の女性が作ったものではないかと、エラはヨハンに詰め寄った。
「このような素晴らしい刺繍は見たことがございません。もしご存知でしたら、この刺繍を施した方を教えていただけませんか?」
「あ、いや、それは……」
ヨハンは大きな手を胸の前でもじもじとさせている。その様子を見てエラはピンときた。ヨハンはカーク子爵家の跡取り息子だ。このハンカチは婚約者や恋人などから贈られたもので、ヨハンはそれを恥ずかしがっているのだろう。
「もしやこちらはカーク様の大事な方が……?」
「えっ!? いや、違う! オレには婚約者はいない!!」
「ではお母様やご身内の方が刺繍を施されたのでしょうか?」
「あ、いや、違うんだ……それは、その……エデラー嬢、笑わないで聞いてくれるか?」
「はい、もちろんです」
歯切れの悪いヨハンにエラは首をかしげつつも神妙に頷いた。
「……その刺繍は……このオレが刺したんだ」
「えっ!?」
ハンカチを手にしたエラは「まあ!」と感嘆の声を上げた。先程は気づかなかったが、そのハンカチには見事な刺繍が施されている。
色鮮やかな花が描かれた緻密で繊細な刺繍は、見事の一言だった。その刺繍にはエラが知りえないような複雑なステッチが使われているようだ。
「カーク様……こちらの刺繍は一体どなたが……?」
思わず広げて隅々まで観察してしまう。見たところ大量生産される既製品ではなく、明らかに個人が刺したと思われる一点もののハンカチだった。
貴族女性が手慰みに刺繍を刺すことはよくある話だ。ヨハンの身内の女性が作ったものではないかと、エラはヨハンに詰め寄った。
「このような素晴らしい刺繍は見たことがございません。もしご存知でしたら、この刺繍を施した方を教えていただけませんか?」
「あ、いや、それは……」
ヨハンは大きな手を胸の前でもじもじとさせている。その様子を見てエラはピンときた。ヨハンはカーク子爵家の跡取り息子だ。このハンカチは婚約者や恋人などから贈られたもので、ヨハンはそれを恥ずかしがっているのだろう。
「もしやこちらはカーク様の大事な方が……?」
「えっ!? いや、違う! オレには婚約者はいない!!」
「ではお母様やご身内の方が刺繍を施されたのでしょうか?」
「あ、いや、違うんだ……それは、その……エデラー嬢、笑わないで聞いてくれるか?」
「はい、もちろんです」
歯切れの悪いヨハンにエラは首をかしげつつも神妙に頷いた。
「……その刺繍は……このオレが刺したんだ」
「えっ!?」