氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
前王妃のセレスティーヌは隣国の王女だったし、セレスティーヌの娘である第二王女テレーズが隣国の王族へと嫁いだのは二年ほど前の話だ。それ以外に、貴族同士での婚姻も過去に例はいくつかあった。
実際にアンネマリーの従兄は隣国の貴族令嬢と結婚しており、子供ももうけている。その従兄は現在、アンネマリーの父トビアスの外交補佐についていて、将来、養子に入ってクラッセン侯爵家を継ぐ予定だ。
一人娘のアンネマリーは今のところ婚約者はいないが、いずれ侯爵令嬢として他家へ嫁ぐことになるだろう。隣国の貴族と政略結婚することもあり得る話だ。従兄の結婚も外交を行う上での政略結婚だったが、ふたりは仲睦まじく、いつ見てもうらやましいくらいだ。
「ね、だから、もうそんな悲しい顔はしないで……リーゼの可愛らしい笑顔を見せてちょうだい」
濡れた頬を両手で包んで、覗きこむように微笑んだ。リーゼロッテは、懸命に涙を止めようとしているが、しゃくりあげては涙があふれてきてうまくいかないようだ。
「リーゼは昔より泣き虫になったのではない?」
茶化すように言うと、リーゼロッテは口をへの字に曲げて鼻をすすりあげた。
「だって……だって、わたくし、アンネマリーのために何もしてあげられない……」
「……わたくしのためにこんなに泣いてくれているじゃない……わたくしそれだけで、リーゼに救われた気分だわ……」
リーゼロッテの涙がこぼれるたびに、王子への未練も一緒に洗い流されていくようだ。今なら思える。あれは、王城の奥にある美しい庭がみせた、儚い幻だったのだと。
思いがけず王子にやさしくされて、立場も忘れて舞い上がってしまった。手に届く存在だと錯覚して、勝手に傷ついた自分がおろかだったのだ。
(だから本当に……もう終わりにしなくちゃ)
実際にアンネマリーの従兄は隣国の貴族令嬢と結婚しており、子供ももうけている。その従兄は現在、アンネマリーの父トビアスの外交補佐についていて、将来、養子に入ってクラッセン侯爵家を継ぐ予定だ。
一人娘のアンネマリーは今のところ婚約者はいないが、いずれ侯爵令嬢として他家へ嫁ぐことになるだろう。隣国の貴族と政略結婚することもあり得る話だ。従兄の結婚も外交を行う上での政略結婚だったが、ふたりは仲睦まじく、いつ見てもうらやましいくらいだ。
「ね、だから、もうそんな悲しい顔はしないで……リーゼの可愛らしい笑顔を見せてちょうだい」
濡れた頬を両手で包んで、覗きこむように微笑んだ。リーゼロッテは、懸命に涙を止めようとしているが、しゃくりあげては涙があふれてきてうまくいかないようだ。
「リーゼは昔より泣き虫になったのではない?」
茶化すように言うと、リーゼロッテは口をへの字に曲げて鼻をすすりあげた。
「だって……だって、わたくし、アンネマリーのために何もしてあげられない……」
「……わたくしのためにこんなに泣いてくれているじゃない……わたくしそれだけで、リーゼに救われた気分だわ……」
リーゼロッテの涙がこぼれるたびに、王子への未練も一緒に洗い流されていくようだ。今なら思える。あれは、王城の奥にある美しい庭がみせた、儚い幻だったのだと。
思いがけず王子にやさしくされて、立場も忘れて舞い上がってしまった。手に届く存在だと錯覚して、勝手に傷ついた自分がおろかだったのだ。
(だから本当に……もう終わりにしなくちゃ)