氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あんね、まりぃ」

 しゃくりあげるリーゼロッテに舌足らずに名前を呼ばれ、アンネマリーはリーゼロッテを真っ直ぐに見た。

「ねえ、リーゼロッテ……リーゼはまたしばらく公爵家に滞在するのよね?」
「ええ、この後に公爵領に向かうことになっているわ……」
「そう……公爵様は、今も王城へ行かれているかしら?」
「ジークヴァルト様……? ええ、そうね、週に二、三度は王城へ出仕(しゅっし)されているけれど……それがどうかしたの……?」

 リーゼロッテは涙の残る顔で、不思議そうに首をかしげた。

「それなら、ね、リーゼロッテ。わたくしの頼みをひとつだけ聞いてくれないかしら?」
「わたくしにできることなら……」

 リーゼロッテの返事に頷くと、アンネマリーはここで少し待っていてほしいと居間を出ていった。その間に、クラッセン家の侍女がリーゼロッテの腫れた目を冷やすために、あれこれと世話を焼きに来てくれた。

(このまま公爵領に行ったら、みなに心配されてしまうわ……向こうに着くまでに赤みがひけばいいけれど……)

 クラッセン侯爵家で何があったのだと問い詰められても困ってしまう。アンネマリーの失恋が悲しくて、泣いてしまったのだとは言えるはずもなかった。

 しばらくすると、アンネマリーが戻ってきた。その手には、綺麗な小箱(こばこ)(たずさ)えられている。

「リーゼロッテ、これを……」

 失くしてはいけない大事なもののように、アンネマリーはその小箱をリーゼロッテに差し出した。

「王城で、カイ・デルプフェルト様にお渡ししてほしいと、公爵様にお願いしてもらえないかしら……?」
「カイ様に……?」
「ええ、この手紙も一緒にお渡ししてほしいの」

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