氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
意外な人物の名前に、リーゼロッテは困惑を隠せなかった。アンネマリーとカイが親しくしている姿など、リーゼロッテは見たことがない。
あると言えば、王城で異形の者たちが集まってきたあの日だろうか。山ほどの異形の合間を縫って、客間に向かっている時、カイもアンネマリーもあの場にいたはずだ。
だが正直いって、あの時は自分のことだけで手いっぱいで、周囲に気を配る余裕などなかった。あの日の記憶は、ひどく曖昧だ。
「それは構わないけれど……お渡しするのは、カイ様、でいいの……?」
問うまでもなく、その箱の中身が何なのか、リーゼロッテには分かっていた。
十五歳の誕生日を迎え、力を感じ取れるようになったリーゼロッテは、箱からにじみ出ているその波動から、それは王子殿下の懐中時計なのだろうと確信していた。
王妃の離宮でアンネマリーは、その懐中時計を王子殿下から預かったのだと言っていた。ジークヴァルトなら、王子に直接手渡すこともできるだろうに、それがどうしてカイなのだろうか?
「ええ……お渡しして頂けたら、カイ様はきっとわかってくださると思うから……」
アンネマリーは静かに言った。どこかほっとしたような顔つきのアンネマリーに、リーゼロッテはそれ以上のことを聞くことはできなかった。
「わかったわ、カイ様に届けてもらうようジークヴァルト様にお願いしてみる」
ジークヴァルトなら快く引き受けてくれるだろう。きっと彼も中に何が入っているのか、確かめるまでもなくわかってくれるだろうから。
「ありがとう……リーゼロッテ」
ほっと安心したようにアンネマリーは微笑んだ。その笑顔はやはり儚げに見えて、リーゼロッテの心はちくちくと痛んだのだった。
あると言えば、王城で異形の者たちが集まってきたあの日だろうか。山ほどの異形の合間を縫って、客間に向かっている時、カイもアンネマリーもあの場にいたはずだ。
だが正直いって、あの時は自分のことだけで手いっぱいで、周囲に気を配る余裕などなかった。あの日の記憶は、ひどく曖昧だ。
「それは構わないけれど……お渡しするのは、カイ様、でいいの……?」
問うまでもなく、その箱の中身が何なのか、リーゼロッテには分かっていた。
十五歳の誕生日を迎え、力を感じ取れるようになったリーゼロッテは、箱からにじみ出ているその波動から、それは王子殿下の懐中時計なのだろうと確信していた。
王妃の離宮でアンネマリーは、その懐中時計を王子殿下から預かったのだと言っていた。ジークヴァルトなら、王子に直接手渡すこともできるだろうに、それがどうしてカイなのだろうか?
「ええ……お渡しして頂けたら、カイ様はきっとわかってくださると思うから……」
アンネマリーは静かに言った。どこかほっとしたような顔つきのアンネマリーに、リーゼロッテはそれ以上のことを聞くことはできなかった。
「わかったわ、カイ様に届けてもらうようジークヴァルト様にお願いしてみる」
ジークヴァルトなら快く引き受けてくれるだろう。きっと彼も中に何が入っているのか、確かめるまでもなくわかってくれるだろうから。
「ありがとう……リーゼロッテ」
ほっと安心したようにアンネマリーは微笑んだ。その笑顔はやはり儚げに見えて、リーゼロッテの心はちくちくと痛んだのだった。