氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
エーミールが観察した結果、エラに対して異形がとる行動は三パターンあることがわかった。
弱い異形はエラの存在を認めると、一目散に逃げ去っていく。今のような大きいが悪意のない異形は、エラとの接触を極端に嫌がる様子を見せる。
そして、強烈な悪意を持つ異形にいたっては、エラに手を伸ばすも、エラはその手を何ごともなくすり抜けてしまう。肩透かしを食らった異形は何度もエラにくってかかるのだが、その腕が空を切るばかりだ。その様子は、言い寄る女性にまるで相手にされない哀れな男のようで、見ていてとても滑稽だった。
(無知なる者とは一体何なのだ……?)
異形の姿を視ることができない只人だとしても、その影響を免れることはできない。憑かれれば大小の差はあれ何かしらの障りが起こる。だが、無知なる者はそもそも異形が近づけないのだ。
これは、使いようによってはジークヴァルトのいい手駒になり得るかもしれない。そう思うと、エーミールはエラに対して強烈に興味を抱いた。馬車での件はいいきっかけだ。己の醜態を逆手にとって、エラを囲い込んでしまおう。
「エーミール様、こちらです」
エラが選んだ店は何の変哲もない雑貨屋だった。貴族街に店を構えている以上、庶民にとっては高級店なのだろうが、最上ランクとは言い難い店だ。
「こんな店でいいのか?」
「この店がよいのです」
にっこりと微笑んで、エラは扉に手をかけようとする。それに慌てたエーミールが、エラの手を取り自ら扉を引いた。
ちりりんと軽やかな音が店内に響く。ほかに客はいないようだ。ほどなくして奥から店の者と思しき男が顔を出した。
「いらっしゃいませ、旦那様、お嬢さ、まぁ?」
ふたりの来店ににこやかだった店員の目がみるみるうちに見開かれ、語尾が不自然に跳ね上がった。
弱い異形はエラの存在を認めると、一目散に逃げ去っていく。今のような大きいが悪意のない異形は、エラとの接触を極端に嫌がる様子を見せる。
そして、強烈な悪意を持つ異形にいたっては、エラに手を伸ばすも、エラはその手を何ごともなくすり抜けてしまう。肩透かしを食らった異形は何度もエラにくってかかるのだが、その腕が空を切るばかりだ。その様子は、言い寄る女性にまるで相手にされない哀れな男のようで、見ていてとても滑稽だった。
(無知なる者とは一体何なのだ……?)
異形の姿を視ることができない只人だとしても、その影響を免れることはできない。憑かれれば大小の差はあれ何かしらの障りが起こる。だが、無知なる者はそもそも異形が近づけないのだ。
これは、使いようによってはジークヴァルトのいい手駒になり得るかもしれない。そう思うと、エーミールはエラに対して強烈に興味を抱いた。馬車での件はいいきっかけだ。己の醜態を逆手にとって、エラを囲い込んでしまおう。
「エーミール様、こちらです」
エラが選んだ店は何の変哲もない雑貨屋だった。貴族街に店を構えている以上、庶民にとっては高級店なのだろうが、最上ランクとは言い難い店だ。
「こんな店でいいのか?」
「この店がよいのです」
にっこりと微笑んで、エラは扉に手をかけようとする。それに慌てたエーミールが、エラの手を取り自ら扉を引いた。
ちりりんと軽やかな音が店内に響く。ほかに客はいないようだ。ほどなくして奥から店の者と思しき男が顔を出した。
「いらっしゃいませ、旦那様、お嬢さ、まぁ?」
ふたりの来店ににこやかだった店員の目がみるみるうちに見開かれ、語尾が不自然に跳ね上がった。