氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 それだけリーゼロッテに対して妄信(もうしん)(てき)になっているのだろう。そう考えれば、エラの言動も可愛らしく思えてくる。

 エーミールの鼻で(わら)うような態度に、ハンスが少しばかり面白くなさそうな顔をした。しかし当のエラはブローチを棚に戻しながら、ただしゅんとうなだれている。

「いいだろう。あなたのその主人思いなところに敬意を払って、わたしからこれを贈るとしよう」

 そう言ってエーミールが手に取ったのは、ハンスが初めに並べた品物の中にあったエメラルドの髪飾りだった。置いてあった物の中でも、特に高価な物だ。

「これならばリーゼロッテ様の色であるし、何より、エラ、あなたのその髪によく()える」

 そう言って微笑みながら、エーミールはその髪飾りをエラの髪にさしこんだ。

「…………っ!」

 口をパクパクして何かを言いかけたエラを制して、ハンスが声を張り上げた。

「お買い上げありがとうございます! そちらは希少(きしょう)なエメラルドでできている逸品(いっぴん)です! さすがはグレーデン様、お目が高い!」
世辞(せじ)はいい。支払いはグレーデン家にまわしてくれ。ああ……価格は適正で、いや、少しくらいなら色をつけてもかまわないぞ」

 先ほどのエラとのやりとりが聞こえていたのか、エーミールは人の悪そうな笑みをハンスに向けてきた。

「ありがたいお言葉、痛み入ります!」
 がばっと頭を下げながら、ハンスは内心冷や汗をかいていた。

(お嬢様~あなたとんでもない人に目をつけられたようですよ~)

「ああ、包まなくていい。それはつけたまま帰る」
「え? でも、エーミール様」
「はいはい、承知いたしましたぁ! さあさ、エラお嬢様、髪飾りが落ちないように整えましょうね」

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