氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 アンネマリーに見送られながら、クラッセン家のエントランスを出たリーゼロッテは、馬車の停まる場所へと移動した。

 控えの部屋で待っていたエマニュエルと途中で合流したが、泣いた後の顔はごまかされなかったようだ。周囲の目もあり、すぐに問いただされることはなかったが、後である程度は事情を話さなければならないだろう。

 馬車の前に数人の人影が見え、着ている服装から公爵家の護衛たちだと分かる。冷やしたとはいえ、泣きはらした顔を見られたくないと、リーゼロッテは不自然に見えないようにそっと視線をそらそうとした。

 しかし、大柄な人物が二名並んでいるのが視界に入り、リーゼロッテはそのふたりを思わず二度見(にどみ)した。

(か、カークがふたりいる……!)

 リーゼロッテの姿を認めると、並ぶカークのうち、ひとりが(ひざまず)いて騎士の礼を取った。もうひとりはそのまま静かに立っている。
 近づいてよくよく見ると、騎士の礼を取ったカークは公爵家の護衛服を着ており、立ったままのカークは古びた(よろい)を身に着けたひげ面のいつものカークだった。

「リーゼロッテ様、こちらは公爵家の護衛騎士をされているヨハン・カーク様です」

 ふたりを交互に見つめて目を白黒させているリーゼロッテに、跪く護衛服のカークの横に立ったエマニュエルが声をかけた。

「ヨハン……カーク……さま?」
「はい!リーゼロッテ様! ヨハンと申します! いずれ子爵家を継ぐ身ではありますが、この命に代えてもリーゼロッテ様にお仕えする所存です!」

 ヨハンは巨体を地面にめり込ませそうな勢いで、さらに深い騎士の礼を取った。

「ヨハン様は、カーク子爵家の跡継ぎでいらっしゃいます」

 すまし顔で言うエマニュエルは、どこか含んだ笑いを見せた。

「え?カーク子爵? ……もしかして、ヨハン様はカークの……」
「はい! そこの異形、不動のカークは、わたしの先祖であります!」

< 24 / 684 >

この作品をシェア

pagetop