氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ここは……占いの店か?」
「はい、最近貴族の間でも話題になっていて、貴族街(きぞくがい)聖女(せいじょ)と呼ばれる占い師の店です。こんな場所にあるとは知りませんでしたが……。店が開くのが不定期で、なかなか占ってもらえないことで有名なのです」
「貴族街の聖女……? ふん、女子供はこういったものが本当に好きだな」
「あ……エーミール様はご興味ございませんよね。随分(ずいぶん)(はず)れに来てしまったようです。戻った方がいいでしょう」

 エラは来た道を戻ろうと歩き始めて、エーミールに引き寄せられた。

「あなたは占ってもらいたいのだろう? 店は開いているようだ。遠慮することはない」
「え? ですが、わたしのためにエーミール様にお付き合いいただくのは……」

 口止め料はもうたっぷりもらったのだ。これ以上要求することはエラにはできなかった。

「何を今さら……いや、そうだな。そんなに言うなら、帰りの馬車でもあなたの手を()()()()()()()()()。それならばここに入る意味もあるだろう?」

 そう言うとエーミールはさっさとエラの手を引いて店の扉を開けた。

 がららんという乾いたドアベルの音が重く響いた店の中は、薄暗く静まり返っていた。(こう)()かれているのだろう。薄い(けむり)白檀(はくだん)のような独特の匂いが(ただよ)っている。

「誰もいないのか?」

 エーミールが低い声で問うと、薄暗い部屋の奥から音もなくひとりの女性が現れた。

「ようこそおいでくださいました、貴族の旦那様」

 その女性はフード付きのマントを羽織っており、そのフードを()(ぶか)にかぶっているためその表情はうかがえない。

「あなたが占い師か?」
「いえ、わたしは付き人にございます。占いをご希望なのは、あなた様でよろしいですか?」
「いや、わたしは占いになど興味はない。こちらの女性を占ってもらおう」
「承知いたしました。ではこちらへどうぞ、貴族のお嬢様」

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