氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 部屋のさらに奥にある扉の中へと促される。エーミールもそれに続こうとすると、入口の手前で付き人の女性に制された。

「占いとは極めて個人的なもの。知りたくない真実を(あば)いてしまうこともございます。どうぞここよりはご本人様のみでお願いしたく存じます」
「いやしかし……」

 怪しげな雰囲気にエーミールの顔に不信感が(あら)わになる。女性は意に介した様子もなく静かな声で続けた。

「扉は開けたままにさせていただきます。声が届かぬ場所であれば結構ですので、旦那様はこちらでお待ちください」

 抑揚(よくよう)のない声にもかかわらず、エーミールはその有無を言わせない雰囲気に鼻白んだ。エラも不安そうにエーミールの顔を見上げている。

「あの、エーミール様。わたしは無理に占わなくても……」

「……占い師は女なのだな?」
 エラには答えず、エーミールは付き人の女性に問うた。

「はい、女性にございます、貴族の旦那様」

 その返事にふ、と息をつくと、エーミールはエラの背中を押した。

「行ってくるといい。わたしはここにいる。何かあったらすぐに呼ぶんだ」
「では、貴族のお嬢様。どうぞこちらへ」

 戸惑いつつも、エラは部屋の中へと足を踏み入れた。ついたてを回り込んで奥へと進むと、何本ものろうそくの炎が、白い壁のあちこちに濃い影を作りながら揺らめいている。

「ようこそ、宿世(すくせ)の占いへ」

 ヴェールで髪と口元を隠した若い女性が、ゆっくりと立ち上がりながらその美しい瞳を細めた。

「ここは導かれた者のみがたどり着く占いの館。さあ、早速占いましょう? 貴族のお嬢様」



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