氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「選ぶ側の人間……?」
「ええ。あなたはたくさんの者から求められる。多くがあなたを欲し、手に入れようと手をのばしてくるわ。今も思い当たることがあるのではなくて?」
そう問われ、エラは公爵家での自分のモテぶりを思い出した。老若男女問わずエラの取り合いが繰り広げられる公爵家での日々は、ちょっと辟易するくらいのものだった。しかしダーミッシュ領ではまったくそんなことはおきないし、王城では粉をかけてくる人間はいるにはいたが、常軌を逸するほどの話ではなかった。
「その顔は思い当たることがあるようね。……あら? でもあなた最近、男運が壊滅状態だったでしょ。ああ、でももうその時期は去ったようね。よかったわね、あなた、幸せな結婚ができるわよ」
「え? わたしは結婚する気はありません。お仕えするお嬢様に人生を捧げるつもりです」
エラはとんでもないとばかりに貴族街の聖女の言葉を否定した。生涯リーゼロッテに尽くすと、そう決めたのだ。
「ふふふ、あなたがどう思っていようと宿命は変えられないの。あなたは、そうね……これから三人の異性と出会う……いえ、もうその者たちとは出会っているはずだわ。あなたはいずれ、その三人の中から一人を選ぶことになる」
「え……」
もう出会っていると言われて、エラの頭に浮かんだのはエーミールだった。しかし侯爵家の人間であるエーミールが自分を望むなど、現実的に見てあり得ない。ましてや自分が選ぶ立場にあるなど不敬すぎると、慌ててその考えを否定した。
「だとしても、誰も選ばないということもあるのでは……」
「言ったでしょう? あなたは選ぶ側の人間。三人のうち、必ず誰かの手を取ることになるわ」
きっぱりと言われて、釈然としない気持ちになる。
「誰の手を取っても、あなたは幸せになれる。ただ、その度合いはあなたの努力次第、といったところね」
いまいち納得できなくて、「はあ」とエラは微妙な返事を返した。
「その時が来れば必然とあなたにも分かるわ。宿世とは逆らえぬ深き業。どの道を辿ろうとも行く先はただひとつ……」
そう言って細められた瞳は、蝋燭の炎を映してあやしく揺らめいた。
「ええ。あなたはたくさんの者から求められる。多くがあなたを欲し、手に入れようと手をのばしてくるわ。今も思い当たることがあるのではなくて?」
そう問われ、エラは公爵家での自分のモテぶりを思い出した。老若男女問わずエラの取り合いが繰り広げられる公爵家での日々は、ちょっと辟易するくらいのものだった。しかしダーミッシュ領ではまったくそんなことはおきないし、王城では粉をかけてくる人間はいるにはいたが、常軌を逸するほどの話ではなかった。
「その顔は思い当たることがあるようね。……あら? でもあなた最近、男運が壊滅状態だったでしょ。ああ、でももうその時期は去ったようね。よかったわね、あなた、幸せな結婚ができるわよ」
「え? わたしは結婚する気はありません。お仕えするお嬢様に人生を捧げるつもりです」
エラはとんでもないとばかりに貴族街の聖女の言葉を否定した。生涯リーゼロッテに尽くすと、そう決めたのだ。
「ふふふ、あなたがどう思っていようと宿命は変えられないの。あなたは、そうね……これから三人の異性と出会う……いえ、もうその者たちとは出会っているはずだわ。あなたはいずれ、その三人の中から一人を選ぶことになる」
「え……」
もう出会っていると言われて、エラの頭に浮かんだのはエーミールだった。しかし侯爵家の人間であるエーミールが自分を望むなど、現実的に見てあり得ない。ましてや自分が選ぶ立場にあるなど不敬すぎると、慌ててその考えを否定した。
「だとしても、誰も選ばないということもあるのでは……」
「言ったでしょう? あなたは選ぶ側の人間。三人のうち、必ず誰かの手を取ることになるわ」
きっぱりと言われて、釈然としない気持ちになる。
「誰の手を取っても、あなたは幸せになれる。ただ、その度合いはあなたの努力次第、といったところね」
いまいち納得できなくて、「はあ」とエラは微妙な返事を返した。
「その時が来れば必然とあなたにも分かるわ。宿世とは逆らえぬ深き業。どの道を辿ろうとも行く先はただひとつ……」
そう言って細められた瞳は、蝋燭の炎を映してあやしく揺らめいた。