氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 ジークヴァルトに連れられるまま店の中を進むと、無駄に大きなエントランスの先に幅広(はばひろ)の階段が見えた。数段昇ると踊り場があり、そこを折り返した階段の先の二階に店舗(てんぽ)が広がっていた。

「まあ……!」

 ドレスやアクセサリー、靴、バッグなどが目に入る。それだけではなく、ぬいぐるみやインテリア系の小物、ステーショナリーグッズなど、左右の(たな)といくつかの島になった陳列台(ちんれつだい)に、ぱっと見た感じだけでも女子の心をくすぐる品々が、上品にディスプレイされている。

(雑貨屋っていうより、高級なセレクトショップみたい……!)

 日本での記憶がよみがえる。予算はないが見るだけなら無料(ただ)だ。ウィンドウショッピングが好きで、何時間でもショッピングモール(めぐ)りをしていたことをリーゼロッテは思い出した。

 店内に熱い視線を巡らせていると、ジークヴァルトがそっと背中に手を添えてくる。

「気に入ったものを好きなだけ選ぶといい」
「え……?」

 ジークヴァルトを見上げて、もう一度店の中に視線を戻した。広い店内を見渡しても、自分たち以外に客の影はない。

(もしかして、店を貸し切ったのかしら……)

 他の店の人の入りを見ると、一日店を閉めるだけでも損失は少なくないだろうことが(うかが)える。しかし、少し離れた位置で店主のおじさんはニコニコと笑顔で立っている。これは店を貸切るにあたって、相当な(がく)が支払われているに違いない。

「……ジークヴァルト様、もしかしてわたくしのために、この店を貸し切りにしてくださったのですか?」
「ああ」

(やっぱり! わたしのためだけに店を一軒貸し切るなんて……!)

 庶民(しょみん)(だましい)が荒ぶって、申し訳ない気持ちがこみあげてくる。しかし、ふとアデライーデの顔が脳裏(のうり)をよぎり、リーゼロッテはギリギリのところで踏みとどまった。

(そうよ! ジークヴァルト様に恥をかかせてはいけないわ!)

< 238 / 684 >

この作品をシェア

pagetop