氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「何が宿世の占いですか。ここは導かれた者のみがたどり着く場所……などと、王女として言っていて恥ずかしくはないのですか?」
「あら、この格好もなかなか様になっているでしょう? こういったものは形から入るべきとイジドーラお義母様もおっしゃっているもの。……本当なら市井におりて占いの館を開きたかったのに、アルベルトがどうしてもダメだと言うから、こうして貴族街で店をかまえてあげたのじゃない」
第一王女付きの従者であるアルベルトは、何を言っても響かないクリスティーナに深いため息をついた。
「一国の王女が平民相手に占いなど、お止めするのは当然です。まったく、心配するこちらの身もなってください。貴族相手でも、いつ王女と知れるかと冷や冷やしているというのに……。それに託宣の間から水鏡の一部を持ち出すなど、神殿に知れたら一体どうなることか」
「声だけでわたくしとわかる人間など、貴族にだって数えるほどしかいないじゃない。お父様の許しは得ているし、神殿にだって見つからなければどうということはないわ。だいたい、この水鏡は自らわたくしの手に落ちてきたのよ? それこそ龍の思し召しでしょう?」
細い指先で目の前の丸い水晶をなぞりながら、クリスティーナ王女はくすくすと笑った。
「それに……」
たのしそうに笑っていた王女の菫色の瞳がすっと細められる。
「せっかく高祖伯母様から受け継いだこの力だもの……。ハインリヒの託宣の相手を探すために、使わないなんてどうかしているわ」
「クリスティーナ様……お気持ちはお察しいたしますが、王子殿下のお相手は神殿と王家が手を尽くして探しております。今さら貴族の中から見つかるとは思えません」
「だから市井におりて占いをしたかったのに……」
「なんとおっしゃられましても、わたしの意見は変わりませんよ」
表情を変えず言うアルベルトに、クリスティーナは再びくすくすと笑った。
「ほんと、あなたってつまらない男ね。ねぇ、ヘッダもそう思うでしょう?」
「いえ。わたくしの口からは何とも……」
ヘッダが困ったように返答したところで、入口の扉のドアベルががららんと耳障りな音を立てた。
「あら? 今日は大入りね」
「あら、この格好もなかなか様になっているでしょう? こういったものは形から入るべきとイジドーラお義母様もおっしゃっているもの。……本当なら市井におりて占いの館を開きたかったのに、アルベルトがどうしてもダメだと言うから、こうして貴族街で店をかまえてあげたのじゃない」
第一王女付きの従者であるアルベルトは、何を言っても響かないクリスティーナに深いため息をついた。
「一国の王女が平民相手に占いなど、お止めするのは当然です。まったく、心配するこちらの身もなってください。貴族相手でも、いつ王女と知れるかと冷や冷やしているというのに……。それに託宣の間から水鏡の一部を持ち出すなど、神殿に知れたら一体どうなることか」
「声だけでわたくしとわかる人間など、貴族にだって数えるほどしかいないじゃない。お父様の許しは得ているし、神殿にだって見つからなければどうということはないわ。だいたい、この水鏡は自らわたくしの手に落ちてきたのよ? それこそ龍の思し召しでしょう?」
細い指先で目の前の丸い水晶をなぞりながら、クリスティーナ王女はくすくすと笑った。
「それに……」
たのしそうに笑っていた王女の菫色の瞳がすっと細められる。
「せっかく高祖伯母様から受け継いだこの力だもの……。ハインリヒの託宣の相手を探すために、使わないなんてどうかしているわ」
「クリスティーナ様……お気持ちはお察しいたしますが、王子殿下のお相手は神殿と王家が手を尽くして探しております。今さら貴族の中から見つかるとは思えません」
「だから市井におりて占いをしたかったのに……」
「なんとおっしゃられましても、わたしの意見は変わりませんよ」
表情を変えず言うアルベルトに、クリスティーナは再びくすくすと笑った。
「ほんと、あなたってつまらない男ね。ねぇ、ヘッダもそう思うでしょう?」
「いえ。わたくしの口からは何とも……」
ヘッダが困ったように返答したところで、入口の扉のドアベルががららんと耳障りな音を立てた。
「あら? 今日は大入りね」