氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
しんと静まり返る中、リーゼロッテはフーゴと共に長い絨毯の上を慎重に進んでいた。刺さるような周囲の視線を感じ、緊張が極度に高まっていくのが自分でもよくわかる。軽く添えていただけのフーゴの肘を思わず強く掴んでしまう。
「怖いのかい?」
前を向いたままフーゴが小声で言った。肯定するようにふたたび手に力が入る。
「大丈夫だよ。何も心配することはない。わたしがついているからね」
「はい、お義父様」
小さく笑顔を返すも、やはりぎこちないものになってしまう。緊張で転んだりしないかとさらに歩みに力が入る。
「おや? まだ緊張しているようだね。だったらお前にいいことを教えてあげよう」
そう言ってフーゴは、王のいる壇上へと視線を向けたままやさしく微笑んだ。
「クリスタはね、デビューの時に王の前で転んでしまったんだよ。それはもう見事にね」
「えっ?」
「瞳を潤ませて頬を真っ赤に染める姿は本当に可愛くて、わたしは一瞬でクリスタに恋をしたんだ。この人を一生守っていきたいと、そんなふうに思ってね。他の誰にもとられたくないと、わたしはすぐさま結婚を申し込んだよ」
歩みは止めぬまま、周りにおかしく見られない程度にリーゼロッテはその目を見開いた。
「この話をしたことはクリスタには内緒だよ?」
フーゴに穏やかに言われて、リーゼロッテの顔に自然な笑みが戻った。
「ジークヴァルト様もいらっしゃる。何も心配はいらないよ」
「はい。ジークヴァルト様のためにも粗相をせぬよう頑張りますわ」
自分が転んではジークヴァルトにも恥をかかせてしまう。フーゴのおかげで緊張は小さくなったものの、絨毯に足を取られぬようにさらに慎重な足取りとなった。
「例え転んだところで問題はないさ。ジークヴァルト様はそのくらいのことで揺らぐお方ではないよ。リーゼロッテもよく知っているだろう?」
そう言われてリーゼロッテはふふと笑った。確かに自分が転んだりしたら、ジークヴァルトは夜会の会場だろうとかまわずこの身を抱き上げ、それきり降ろしてはくれなさそうだ。だが、そう思うと、なおさら転んだりはできないと思ってしまう。
すっかり緊張の解けたリーゼロッテは、転ぶことなく王のいる壇上の前へとたどり着くことができたのだった。
「怖いのかい?」
前を向いたままフーゴが小声で言った。肯定するようにふたたび手に力が入る。
「大丈夫だよ。何も心配することはない。わたしがついているからね」
「はい、お義父様」
小さく笑顔を返すも、やはりぎこちないものになってしまう。緊張で転んだりしないかとさらに歩みに力が入る。
「おや? まだ緊張しているようだね。だったらお前にいいことを教えてあげよう」
そう言ってフーゴは、王のいる壇上へと視線を向けたままやさしく微笑んだ。
「クリスタはね、デビューの時に王の前で転んでしまったんだよ。それはもう見事にね」
「えっ?」
「瞳を潤ませて頬を真っ赤に染める姿は本当に可愛くて、わたしは一瞬でクリスタに恋をしたんだ。この人を一生守っていきたいと、そんなふうに思ってね。他の誰にもとられたくないと、わたしはすぐさま結婚を申し込んだよ」
歩みは止めぬまま、周りにおかしく見られない程度にリーゼロッテはその目を見開いた。
「この話をしたことはクリスタには内緒だよ?」
フーゴに穏やかに言われて、リーゼロッテの顔に自然な笑みが戻った。
「ジークヴァルト様もいらっしゃる。何も心配はいらないよ」
「はい。ジークヴァルト様のためにも粗相をせぬよう頑張りますわ」
自分が転んではジークヴァルトにも恥をかかせてしまう。フーゴのおかげで緊張は小さくなったものの、絨毯に足を取られぬようにさらに慎重な足取りとなった。
「例え転んだところで問題はないさ。ジークヴァルト様はそのくらいのことで揺らぐお方ではないよ。リーゼロッテもよく知っているだろう?」
そう言われてリーゼロッテはふふと笑った。確かに自分が転んだりしたら、ジークヴァルトは夜会の会場だろうとかまわずこの身を抱き上げ、それきり降ろしてはくれなさそうだ。だが、そう思うと、なおさら転んだりはできないと思ってしまう。
すっかり緊張の解けたリーゼロッテは、転ぶことなく王のいる壇上の前へとたどり着くことができたのだった。