氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「その飾りはオクタヴィアの瞳ね。とてもよく似合っていてよ」
「お褒めに与かり光栄でございます」
「今宵はデビュタントが主役の宴。うんと楽しむといいわ」
その薄い水色の瞳が細められ、王妃の唇は妖しく弧を描いた。
「王太子からも一言あるべきではなくて?」
イジドーラ王妃に突然言われ、斜め後ろに立っていたハインリヒ王子が虚を突かれたような顔をした。一瞬、王子とリーゼロッテの視線が合う。リーゼロッテは慌てて瞳を伏せた。
ハインリヒ王子は一度、苦い顔をしたが、すぐに元の冷たい表情に戻る。しかし、リーゼロッテにかけられた言葉は、表情ほどは冷たいものではなかった。
「ダーミッシュ伯爵令嬢。この良き日を迎えられたこと、わたしもうれしく思う」
「もったいないお言葉でございます。王太子殿下には本当によくして頂き、心より感謝いたしております。これからは貴族の一員として、王家の方々に忠義を尽くさせていただきたく存じます」
「ああ。だが、王妃殿下のおっしゃる通り、今日の主役はデビュタントである君たちだ。今夜は気にせず夜会を楽しんでほしい」
動かないままのハインリヒ王子の表情は、王妃の茶会で初めて見たときと同じ「氷結の王子」と呼ばれるにふさわしいものだった。だが、その下に隠された本来の王子は、とてもやさしくやわらかなものだとリーゼロッテは知っている。
カイに託したアンネマリーの小箱が無事に王子の元に戻ったのか、その表情からはうかがえない。だが、リーゼロッテにそれを知るすべは何もなかった。
この後、アンネマリーがこの場に立つはずだ。
そう思うと、胸の痛みが再び顔をもたげてくる。いたたまれない気持ちになっても、リーゼロッテはただ瞳を伏せることしかできなかった。
「お褒めに与かり光栄でございます」
「今宵はデビュタントが主役の宴。うんと楽しむといいわ」
その薄い水色の瞳が細められ、王妃の唇は妖しく弧を描いた。
「王太子からも一言あるべきではなくて?」
イジドーラ王妃に突然言われ、斜め後ろに立っていたハインリヒ王子が虚を突かれたような顔をした。一瞬、王子とリーゼロッテの視線が合う。リーゼロッテは慌てて瞳を伏せた。
ハインリヒ王子は一度、苦い顔をしたが、すぐに元の冷たい表情に戻る。しかし、リーゼロッテにかけられた言葉は、表情ほどは冷たいものではなかった。
「ダーミッシュ伯爵令嬢。この良き日を迎えられたこと、わたしもうれしく思う」
「もったいないお言葉でございます。王太子殿下には本当によくして頂き、心より感謝いたしております。これからは貴族の一員として、王家の方々に忠義を尽くさせていただきたく存じます」
「ああ。だが、王妃殿下のおっしゃる通り、今日の主役はデビュタントである君たちだ。今夜は気にせず夜会を楽しんでほしい」
動かないままのハインリヒ王子の表情は、王妃の茶会で初めて見たときと同じ「氷結の王子」と呼ばれるにふさわしいものだった。だが、その下に隠された本来の王子は、とてもやさしくやわらかなものだとリーゼロッテは知っている。
カイに託したアンネマリーの小箱が無事に王子の元に戻ったのか、その表情からはうかがえない。だが、リーゼロッテにそれを知るすべは何もなかった。
この後、アンネマリーがこの場に立つはずだ。
そう思うと、胸の痛みが再び顔をもたげてくる。いたたまれない気持ちになっても、リーゼロッテはただ瞳を伏せることしかできなかった。