氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
好意を抱いている女性から軽蔑のまなざしで見られるのはこたえたし、何より大事な妹が陰で悪しざまに言われるのがたまらなく辛かった。不動のカークは先祖であるから、それでも耐えがたきを耐え、ヨハンは甘んじてそれをうけいれてきたのだが。
数百年続く呪縛からカーク子爵家を、リーゼロッテは瞬く間に解放してしまった。
リーゼロッテは地上に舞い降りた女神に違いない。眩いほどの清廉な気を纏う姿は、ヨハンの目には神々しくさえ映っていた。
「それはたまたまカークがわたくしの言うことを聞き入れてくれて……。護衛につけとおっしゃったのはジークヴァルト様ですし、それに、カークに護衛してもらって、わたくしもとても助かっておりますから……」
「おおお、なんというおやさしいお言葉! このヨハン、ジークヴァルト様とリーゼロッテ様への恩義は、一生! 決して! 忘れはいたしません!!」
「ヨハン様、そのようにまくし立てては、リーゼロッテ様がお困りになられます。それにここで油を売っていては、リーゼロッテ様のお帰りを首を長くしてお待ちになっているジークヴァルト様に申し訳が立ちませんわ」
「はっ! わたしとしたことが! リーゼロッテ様にひとこと感謝を伝えたかっただけで、悪気があった訳では……!」
「わかりましたから、そろそろ出発しましょう」
呆れたようにヨハンを一瞥し、エマニュエルはリーゼロッテを馬車の中へと促した。
「まったく、ヨハン様にも困ったものだわ」
乗り込んだ馬車が緩やかに進みだすと、エマニュエルはため息をつきながら言った。公爵の馬車は揺れも少なく、相変わらず乗り心地がいい。
「それにしてもヨハン様は、カークそっくりでびっくりしましたわ……」
馬車の窓から流れる景色を見やりながら、リーゼロッテは何かを探すようにきょろきょろと瞳をさ迷させた。
「何かございますか?」
同じようにエマニュエルもリーゼロッテ越しに窓の外を覗き込む。しかし、穏やかな田園風景が広がるばかりで、特にこれと言ったものは見えない。
「カークがどうやって移動しているのか、気になってしまって……」
「言われてみると確かに……伯爵家にもいつの間にか来ていましたものね」
エマニュエルは反対側の窓へも視線を向けた。しかし、そこにカークの姿はない。
数百年続く呪縛からカーク子爵家を、リーゼロッテは瞬く間に解放してしまった。
リーゼロッテは地上に舞い降りた女神に違いない。眩いほどの清廉な気を纏う姿は、ヨハンの目には神々しくさえ映っていた。
「それはたまたまカークがわたくしの言うことを聞き入れてくれて……。護衛につけとおっしゃったのはジークヴァルト様ですし、それに、カークに護衛してもらって、わたくしもとても助かっておりますから……」
「おおお、なんというおやさしいお言葉! このヨハン、ジークヴァルト様とリーゼロッテ様への恩義は、一生! 決して! 忘れはいたしません!!」
「ヨハン様、そのようにまくし立てては、リーゼロッテ様がお困りになられます。それにここで油を売っていては、リーゼロッテ様のお帰りを首を長くしてお待ちになっているジークヴァルト様に申し訳が立ちませんわ」
「はっ! わたしとしたことが! リーゼロッテ様にひとこと感謝を伝えたかっただけで、悪気があった訳では……!」
「わかりましたから、そろそろ出発しましょう」
呆れたようにヨハンを一瞥し、エマニュエルはリーゼロッテを馬車の中へと促した。
「まったく、ヨハン様にも困ったものだわ」
乗り込んだ馬車が緩やかに進みだすと、エマニュエルはため息をつきながら言った。公爵の馬車は揺れも少なく、相変わらず乗り心地がいい。
「それにしてもヨハン様は、カークそっくりでびっくりしましたわ……」
馬車の窓から流れる景色を見やりながら、リーゼロッテは何かを探すようにきょろきょろと瞳をさ迷させた。
「何かございますか?」
同じようにエマニュエルもリーゼロッテ越しに窓の外を覗き込む。しかし、穏やかな田園風景が広がるばかりで、特にこれと言ったものは見えない。
「カークがどうやって移動しているのか、気になってしまって……」
「言われてみると確かに……伯爵家にもいつの間にか来ていましたものね」
エマニュエルは反対側の窓へも視線を向けた。しかし、そこにカークの姿はない。