氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
「クリスタ、待たせたね」
「あら、あなた。リーゼはどうなさったの?」

 貴族たちの合間を縫ってフーゴがクリスタたちの元へとやってきた。

「リーゼロッテはジークヴァルト様におまかせしてきたよ。婚約をお披露目するいい機会だからね」
「ふふ、そうね。ずっとジークヴァルト様との婚約は表に出せなかったものね。おかげでいろいろな噂話が飛び交っているようだし、これでリーゼへの求婚話も落ち着くといいのだけれど」

 ずっと幻の令嬢だったリーゼロッテは、昔から求婚が絶えないでいる。伯爵家と縁続きになりたい貴族から、噂の妖精姫を手に入れたい者までさまざまだったが、理由を出すことなく断ってきたため陰では悪く言われることも多くあった。何度断っても諦めない貴族もいて、逆恨み一歩手前な状態にもなっている。

「グレーデン様、妻についていただいてありがとうございました」
「ではわたしはジークヴァルト様のおそばに行かせてもらいます。さあ、エラ、あなたもだ」
「え?」

 クリスタがフーゴの横に立つのを確認すると、エーミールはエラの手を取った。エラのエスコート役のヨハンは驚いた顔をしている。

「え? ですが、エーミール様」

 戸惑うエラの腰に手をまわして、エーミールはダンスフロアの方向へと歩き始めた。エラはその手を振りほどくこともできずに、わずかに後ろを振り返った。ヨハンが大丈夫だと言うように笑顔を返す。申し訳ない気持ちになりながらも、エラはエーミールに従うしかなかった。

「ジークヴァルト様はおそらくダンスフロアだ。エラ、あなたもリーゼロッテ様が踊る姿を間近で見たいだろう?」
「え? はいっ! もちろんです!」

 エラは瞳を輝かせた。リーゼロッテの記念すべき初舞踏会だ。公爵と踊る様はきっと素晴らしいに違いない。その場面をこの目に焼き付けようとエラの足が自然と早くなる。

< 277 / 684 >

この作品をシェア

pagetop