氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 ジークヴァルトに手を引かれダンスフロアへと舞い戻ったリーゼロッテは、この場がジークヴァルトとの婚約を認知させる場なのだと悟った。恐らくジークヴァルトのそばにいれば、先ほどのように人だかりに囲まれることもないはずだ。

 ダンスを申し込まれても、今の自分ではそつなくかわすことなどできそうにない。だが、今日の所はジークヴァルトが隣にいればやり過ごせそうだ。先ほどのフーゴとの会話を聞く限りでは、今夜はリーゼロッテのエスコートを最後までしてくれるのだろう。

 周囲がこちらを見て興奮気味に会話をしているのが目に入る。キュプカー侯爵が言っていたように、ジークヴァルトが令嬢を連れていることに驚いているのかもしれない。

(できるだけ、仲良く見えるようにふるまわなくちゃ)

 自分に婚約者がいることが周知(しゅうち)されれば、今後ダンスに誘われても断る理由ができると言うものだ。

「ジークヴァルト様、今日はありがとうございます。わたくしと踊っていただけてとてもうれしいですわ」

 はにかむようにとなりを見上げる。ジークヴァルトはちらっとだけこちらを見て「ああ」とそっけなく言った。

(……ジークヴァルト様って、よく見るとかっこいいんだわ)

 王妃の茶会で再会したときに、初めてジークヴァルトの顔を見た。その時も整った顔の青年だとは思ったが、いつもその青い瞳にばかりに目が行ってしまう。
 突拍子(とっぴょうし)もない行動もあるせいか、あまりジークヴァルトの顔の造作(ぞうさく)がどうとは考えずに今日まで過ごしてきた。

 今日のジークヴァルトは夜会服を身に(まと)い、いつもと雰囲気が違って見える。黒を基調とした(すそ)の長いジャケットに、首元にはクラバットが巻かれている。そのクラバットを止めるピンは青い守り石でできているようだ。

 ジャケットの(えり)袖口(そでぐち)(すそ)に青い刺繍(ししゅう)がされていて、よくよく見るとそれはリーゼロッテのドレスに施されたものと同じものであることに気がついた。

(これって、いわゆるペアルックってやつなんじゃ……)

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