氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 自分の色をあらわすドレスや宝石を溺愛するヒロインに贈るというのは、ラノベでもよくあるエピソードだ。周囲から見てもリーゼロッテが身に着けているものは、すべてジークヴァルトが贈ったものだと分かるだろう。

 仲良し作戦はうまくいっているはずなのに、なんだか恥ずかしさがこみあげてくる。客観的に見てジークヴァルトは、イケメンで、公爵で、王子の近衛(このえ)騎士(きし)も務める独身貴族の中でもハイスペックの超優良物件だ。本来なら自分などがとなりに立てるような人物でない。そんな考えが頭をもたげてくる。

 異世界に転生したもののチートはポンコツ。自分的には可愛いと思う容姿も、この世界ではイケてない部類なのだ。子供の頃、ある使用人に投げつけられた言葉がいまだにこの胸に刺さっている。

(……(おご)ってはいけないわ。わたしはこの世界では可愛くなんかないんだから)

 伯爵令嬢としての待遇(たいぐう)義父(ちち)がいてこそのものだ。それに龍の託宣がなければ、ジークヴァルトとこうして並んでダンスフロアに立つこともなかっただろう。そこまで考えて、リーゼロッテはハタと思い出した。

(そうよ、悪役令嬢説はまだ残っているかもしれないんだわ!)
 思わず辺りを見回してみる。もしかしたら条件に合う令嬢がいるかもしれない。

「誰か探しているのか?」
 その様子をいぶかしんでジークヴァルトが問うてくる。

「はい、デビュタントの中にピンクブロンドの髪をした可愛らしいご令嬢がいらっしゃらないかと思いまして……」

(なおかつあひる口が標準装備の庇護(ひご)(よく)をそそる美少女で、平民から養女になった男爵令嬢あたりがヒロインのテンプレよね)

 この場でジークヴァルトとヒロインが恋に落ちるかもしれない。もし、自分が本当に悪役令嬢ポジションだったなら、婚約破棄まっしぐらの運命をたどる可能性もあるのだ。

(こんなことなら乙女ゲームをいろいろとやっとけばよかった。ふがいないぞ、前世の自分……)

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