氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 くるりと回りながらリーゼロッテがつぶやいた。そちらを見やるとエーミールとエラが、自分たちの横で踊っているのが目に入った。
 エーミールはかなり強引なリードで、ジークヴァルトたちの(まわ)りを周回(しゅうかい)するように踊っている。それにつれて、周囲にいた異形たちが遠くへ押しのけられていく。

(エーミール様が異形を祓ってくれているんだわ)

 しかし、エラの様子を伺うとかなり必死の表情で踊っているようだ。それに追い払った異形の者が、エーミールたちが遠のくと再びリーゼロッテたちに近寄ってくる。

 そのいたちごっこの状態に、リーゼロッテは早く曲が終わることを願った。体力も気力もすり減って、気を抜くとジークヴァルトの足を踏んでしまいそうになる。

「踏んでも問題ない」

 余裕のなくなってきたリーゼロッテにジークヴァルトがそっけなく言った。

「いえ、そのようなことできませんわ」
「何ならオレの足に乗っていればいい」
「え?」

 思わずジークヴァルトの足の上に、自分の足を乗せて踊る場面を想像してしまう。その姿は自動で動く竹馬のようで、リーゼロッテはふるふると頭を振ってその想像を振り払った。

「無茶をおっしゃらないでくださいませ」
「冗談だ」

 ふいと顔をそらすとジークヴァルトは近づいてきた異形を危なげなく祓っていく。

(今のは絶対に本気だったわ)

 胡乱(うろん)な視線を向けるもリーゼロッテにおしゃべりを続ける余裕はない。緩めにターンをすると、すぐ近くであの貞子紳士が踊っていた。

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