氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「これ、リーゼロッテのデザインなんですって?」

 ゴシック眼帯を指さしながら、アデライーデは少し困ったように微笑んだ。その様子にリーゼロッテは我に返る。

「あ……差し出がましいことを」
「あら、なかなか好評でしたわよ?」

 エマニュエルがいたずらっぽく言うと、アデライーデも同意するように頷いた。

「マダムもこれを流行らせたいって言っていたわ。わたしはその広告塔なんですって」
「新しもの好きのご夫人たちが興味津々でいらっしゃいましたものね」

 その会話にリーゼロッテは胸をなでおろす。だが、厨二病が荒ぶって暴走するのはほどほどにしなくてはと心を改めた。

「それよりも、リーゼロッテ。今日のあなたはとても素敵だわ。オクタヴィアの瞳もよく似合ってる。……デビューおめでとう。本当に綺麗だわ」
「ありがとうございます、お姉様」

 はにかむように笑うと再びアデライーデにかき抱かれた。

「ああん! かっわっいっいぃ! こんなことなら騎士服を着てくればよかった。そうすればリーゼロッテとまた踊れたのに」
「ああ? そんなことしたらパートナーがいなくなってオレが困るだろうが」

 いきなり会話に参加してきた赤毛の男を、リーゼロッテは驚いて見上げた。いつの間にいたのだろう。見知らぬ男だが、どこかで会ったことがあるような気もする顔立ちだ。

「そんなこと知らないわよ。わたしを令嬢()けに使うのはいい加減やめてほしいんだけど」

 アデライーデはリーゼロッテから離れると、当たりのようにその男の横に立った。

 燃えるような見事な赤毛に金色の瞳をしたその男は、上質な夜会服を(まと)い、その胸には王家の人間である(あかし)の龍の紋章が刺繍(ししゅう)されている。

(ディートリヒ王!?)

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