氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 リーゼロッテ自身は、本当の両親はすでに亡くなっていると思っているようだ。現状で、それを否定することも、肯定することも、フーゴにはどちらもできなかった。

 リーゼロッテが辿(たど)る数奇な運命は、これからどうなっていくのか予想もつかない。ただ、嫁ぐ先で幸せな人生が歩めればそれでいいと、フーゴはただひたすら願う。今日は父として、改めて強くそう感じさせられる一日だ。

 その時、休憩室にエラがやってきた。

「旦那様、奥様、こちらにいらしたのですね」
「リーゼロッテに何かあったの? エラはあのあとずっと一緒だったのでしょう?」
「お嬢様は大丈夫です。お怪我などはされていませんし、今は公爵様と別の休憩室にいらっしゃいます」

 エラのその言葉にクリスタは安堵(あんど)の息を漏らした。

「それと広間で先ほど、クラッセン侯爵様が到着されたと案内がされていました。旦那様もお顔を出された方がよろしいのでは」
「ああ、トビアス殿は間に合ったんだね。そうか、わかった」

 フーゴとクリスタにとって、アンネマリーは可愛い(めい)だ。リーゼロッテ同様、デビューを祝ってやりたい。アンネマリーはリーゼロッテより一つ年上だが、デビューはふたり一緒にしようと幼いころから両家で決めていた。

 酔いもだいぶ冷めてきた。リーゼロッテのためにも、もうひと踏ん張り挨拶回りを頑張ろうと、ダーミッシュ夫妻は夜会の喧騒(けんそう)の中へと戻っていった。

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