氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
◇
「トビアス・クラッセン侯爵、アンネマリー・クラッセン侯爵令嬢、ご登場!」
高らかな声とともに、青ざめたままアンネマリーは長い絨毯へと足を踏みいれた。
壇上へ視線を向ける勇気はなかった。この自分の今の姿を王子に見られることを思うと、絶望しか感じない。
となりを歩く父トビアスは、激怒する様子を隠そうともしていない。壇上を見据え、王を射殺すかの如く睨みつけている。
「アンネマリー、堂々と前を向け。お前は何も悪くはない」
父の苛立った口調に体がこわばる。その苛立ちは自分に向けられたものではないと分かっているが、それが引き金となって泣き出してしまいそうだ。
それでもアンネマリーは奥歯をかみしめ、どうにか顔を上げて真っ直ぐに前を向いた。
王と王妃が並んで座る斜め後ろに立つハインリヒ王子が視界に入る。
会いたくて会いたくて会いたくて、それでも、この手に届かない人――
最上級の夜会服を身に纏い、王族にふさわしく凛としてたたずむその姿に、アンネマリーの呼吸が苦しく乱れた。父の肘に添える手が、いたずらに震えて止めることができなくなる。
「くそが」
そんなアンネマリーの様子にトビアスが奥歯を鳴らした。
「すぐに終わらせてやる。それまでは耐えてくれ」
返事の代わりにアンネマリーは、トビアスの肘を掴む手にぐっと力を入れた。
「トビアス・クラッセン侯爵、アンネマリー・クラッセン侯爵令嬢、ご登場!」
高らかな声とともに、青ざめたままアンネマリーは長い絨毯へと足を踏みいれた。
壇上へ視線を向ける勇気はなかった。この自分の今の姿を王子に見られることを思うと、絶望しか感じない。
となりを歩く父トビアスは、激怒する様子を隠そうともしていない。壇上を見据え、王を射殺すかの如く睨みつけている。
「アンネマリー、堂々と前を向け。お前は何も悪くはない」
父の苛立った口調に体がこわばる。その苛立ちは自分に向けられたものではないと分かっているが、それが引き金となって泣き出してしまいそうだ。
それでもアンネマリーは奥歯をかみしめ、どうにか顔を上げて真っ直ぐに前を向いた。
王と王妃が並んで座る斜め後ろに立つハインリヒ王子が視界に入る。
会いたくて会いたくて会いたくて、それでも、この手に届かない人――
最上級の夜会服を身に纏い、王族にふさわしく凛としてたたずむその姿に、アンネマリーの呼吸が苦しく乱れた。父の肘に添える手が、いたずらに震えて止めることができなくなる。
「くそが」
そんなアンネマリーの様子にトビアスが奥歯を鳴らした。
「すぐに終わらせてやる。それまでは耐えてくれ」
返事の代わりにアンネマリーは、トビアスの肘を掴む手にぐっと力を入れた。