氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「褒めてくれてありがとう。でも次にこういうことがあったら、一目散におうちに逃げないとダメだよ? 巻き込まれたら危ないからね」
 約束だよ? とカイが言うと、少年は瞳を輝かせて何度もコクコクと頷いた。

「ねえ、これ、お駄賃(だちん)あげるから、自警団のおじさんたちが来たら、この転がってるのは人さらいの悪いおじさんたちだって伝えといてくれる?」

 少年に硬貨を握らせると、カイはやさし気に目を細めた。

「うん! ちゃんと自警団のおじちゃんにそう言うよ!」

 硬貨を握りしめ、少年は力強く頷いた。もう一度頭をぽんとすると、カイは立ち上がって呆然と立ち尽くしている少女を振り返った。

「じゃ、行こっか」
「え?」

 戸惑う少女の手を取って、通りをずんずん進む。

「え? ちょっと待って、どこ行くの?」
「とりあえず移動させて。自警団につかまって調書とかとられるの面倒だから」

 振り切ろうと思えば容易に振り切れる程度の力で手をつないでいたものの、少女はその手を離そうとはしなかった。戸惑いながらもカイのあとを素直についてくる。助けてもらった手前、ある程度はカイを信用しているようだが、しかし、先ほどの少年のように両手放しに、というわけではなさそうだ。

(それくらいの分別は持ってるのか)

 一度助けてもらったからと言って、その人間が善人とも限らない。下心があって近づいてきたかもしれないのだ。まあ、カイにしてみれば、いじめられている子犬を助けた程度の事でしかないのだが。

< 324 / 684 >

この作品をシェア

pagetop