氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ねえ、まだ残ってるからちゃんと食べなよ」
「……あなたに言われたくないわ」

 不満げにそうに言いながらも、ルチアは素直に席についた。食事を再開すると、その場に再び沈黙がおりる。

 ルチアは静かにシチューを食べている。食器を鳴らすこともなく、スープをすするわけでもなく。

(いいとこのお嬢様だったのか? もしくは……)

 親との死別で身を落とす子供は少なからずいる。しかしこの国ではそういった子供たちを支援する制度はそれなりにちゃんとしている。地方では領主の意識の高さで差は出てくるが、少なくともここ王都では、教会を頼ればルチアのように薄汚く()せ細る事態は避けられるはずだ。

 しかし、そうしない、いや、そうできない理由があるとすれば、一緒にいる親がお(たず)(もの)か。先ほどの騒ぎでもそのまま自警団に頼れば、目的の場所にだって連れていってもらえただろう。
 だが、ルチアはそうしなかった。黙ってカイについていく選択をしたのは彼女の方だ。

「ねえ、あなた、いいとこの坊ちゃんのくせに、なんであんなに強いの?」

 不意にルチアがカイに問いかけた。食べる手を休め、長い前髪の隙間からじっとこちらを(うかが)っている。

「ああ、オレね、こう見えて王子様を守る仕事をしているんだ」
「何それ」

 ルチアはぷっと吹きだした。

「どうしてそんな嘘つくの? とてもじゃないけど信じられないわ」
「ええー、そこは素直に信じとこうよ」

 カイが心外だとばかりに目を見開くと、ルチアはあきれたように肩をすくめた。

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