氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「信じられるわけないじゃない。王子様を守るようなすごい人が、こんなとこに来るわけないもの」
「最近お(やく)御免(ごめん)になってね、ここには気晴らしに寄ってみたんだ」
「ほら、やっぱり嘘じゃない」

 胡散(うさん)(くさ)そうにカイを見やると、ルチアは食事を再開した。

「ねえ、ルチア。この後、君の行きたいところに案内させてよ」

 ルチアが食べ終わる頃を見計らって、カイはルチアに先ほどの提案をもう一度した。

「でも、これ以上あなたに迷惑はかけられないわ」
「もう、乗りかかった舟だよ。それにルチア、ここがどこの通りかもわからないでしょ?」

 ぐっと言葉に詰まるルチアに、カイは行儀悪く頬杖をついたまま笑いかけた。

「じゃあ、その紙だけでも見せてよ。ここからの行き方くらい教えてあげるからさ」

 躊躇(ちゅうちょ)するようにルチアは紙を差し出してきた。カイはそれを受けとると、丁寧(ていねい)にその紙を開く。ルチアは不安げな様子でそれを目で追っている。大事な紙だからこその不安だろう。カイはサンドイッチの皿を押しのけて、ルチアの手の届く場所に広げて置いた。

「あれ? ここって……」
 綺麗な文字で書かれた住所は、今日カイが訪ねようとしていた場所だった。

「え? もしかしてその店はもうないの!?」

 ルチアが不安げに聞いてくる。その焦りようが、この場所が彼女の最後の(いのち)(づな)なのだと感じさせた。

「いや、今もちゃんとある店だよ。ちょっと入り組んだところにあって、わかりにくい場所にあるんだ」

 その紙には「ダンのこんがり亭」と書かれており、その店のある住所も間違ってはいない。しかしなぜ、よりにもよってここなのだ?

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