氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
ダンは手にした麻袋を、ルチアに手渡した。小さいと思っていた袋はルチアの両手にはみ出すくらいの大きさと重量があった。じゃりとした音と感触に、その中に大量の硬貨が入っているだろうことがわかる。ルチアは手のひらの重みに驚いたように目を見開いた後、ダンの顔を勢いよく見上げた。
「旦那に、アニサと言う女性が訪ねてきたら、それを渡すよう言われていやした。だから、それは好きに使ってくだせぇ」
「母さんがここへ来たら?」
ダンは頷くと、盛大ににたりと笑った。くどいようだが、ルチアを安心させるためにだ。
「でも、こんな大金……本当に、本当にもらっても大丈夫なの?」
「もちろんでさぁ。旦那は女運はからきしでも、金だけは有り余るくらい持っている御仁でやす。金品にはまったく頓着しないお方でやすし、安心して受け取ってくだせぇ」
「……もしかして、ゲオって人、わたしのお父さんなの?」
ルチアの言葉に後ろにいたカイが吹きだした。そのまま忍び笑いをこらえるように、口元に手を当てて肩を震わせながら悶絶している。それをちらりと見やったルチアは、すぐに無視するようにダンに視線を戻した。
「いや、それだけはないと思いやすぜ。何しろ旦那は、逃げちまった奥方を十年以上探して回っていやすから。なんでもその奥方は山奥にいるらしいですぜ」
「それじゃあ、ゲオって人は今も奥さんを探しに行ってるの?」
「まあ、そういうことでさぁ」
ルチアは分かったような分からなかったような、そんな微妙な顔をして、再び手の中の麻袋を見つめた。袋の口をそっと開いてみる。隙間から見えた金貨のきらめきに、ルチアは驚いてその麻袋を取り落とした。勢いで跳ね出た幾枚かが、涼やかな音を立てて床の上を転がっていく。
ルチアはそこに銅貨が入っているのだと思っていた。ルチアが日がな一日懸命に働いて、やっと銅貨一枚がもらえるかどうかという毎日だ。それがこの中につまっているのだと思うと、その重みも増すと言うものだ。
だがそこには金貨がつまっていた。金貨は銅貨の百倍の価値がある。ルチアは今までお目にかかったこともなかった金貨が、落とした麻袋の口から散らばっているのを呆然と見つめた。
「こんなもの……意味もなくもらえないわ……」
「大丈夫、大丈夫。イグナーツ様にとってこのくらいのお金は痛くもかゆくもないから。遠慮せずにもらっとけば?」
カイがこぼれた金貨を麻袋に戻して、それを再びルチアの手のひらに乗せた。
「旦那に、アニサと言う女性が訪ねてきたら、それを渡すよう言われていやした。だから、それは好きに使ってくだせぇ」
「母さんがここへ来たら?」
ダンは頷くと、盛大ににたりと笑った。くどいようだが、ルチアを安心させるためにだ。
「でも、こんな大金……本当に、本当にもらっても大丈夫なの?」
「もちろんでさぁ。旦那は女運はからきしでも、金だけは有り余るくらい持っている御仁でやす。金品にはまったく頓着しないお方でやすし、安心して受け取ってくだせぇ」
「……もしかして、ゲオって人、わたしのお父さんなの?」
ルチアの言葉に後ろにいたカイが吹きだした。そのまま忍び笑いをこらえるように、口元に手を当てて肩を震わせながら悶絶している。それをちらりと見やったルチアは、すぐに無視するようにダンに視線を戻した。
「いや、それだけはないと思いやすぜ。何しろ旦那は、逃げちまった奥方を十年以上探して回っていやすから。なんでもその奥方は山奥にいるらしいですぜ」
「それじゃあ、ゲオって人は今も奥さんを探しに行ってるの?」
「まあ、そういうことでさぁ」
ルチアは分かったような分からなかったような、そんな微妙な顔をして、再び手の中の麻袋を見つめた。袋の口をそっと開いてみる。隙間から見えた金貨のきらめきに、ルチアは驚いてその麻袋を取り落とした。勢いで跳ね出た幾枚かが、涼やかな音を立てて床の上を転がっていく。
ルチアはそこに銅貨が入っているのだと思っていた。ルチアが日がな一日懸命に働いて、やっと銅貨一枚がもらえるかどうかという毎日だ。それがこの中につまっているのだと思うと、その重みも増すと言うものだ。
だがそこには金貨がつまっていた。金貨は銅貨の百倍の価値がある。ルチアは今までお目にかかったこともなかった金貨が、落とした麻袋の口から散らばっているのを呆然と見つめた。
「こんなもの……意味もなくもらえないわ……」
「大丈夫、大丈夫。イグナーツ様にとってこのくらいのお金は痛くもかゆくもないから。遠慮せずにもらっとけば?」
カイがこぼれた金貨を麻袋に戻して、それを再びルチアの手のひらに乗せた。