氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
(異形のことを思うと、ほいほい招待を受けるわけにはいかないものね)
残念に思いつつも、そこは諦めの境地で受け入れているリーゼロッテだ。
不意に横から「あーん」と菓子が差し出され、リーゼロッテは条件反射のようにそれを口にした。それから、迷いなくテーブルの上にある一口大のクラッカーを手に取り、それをそのまま隣に座ったジークヴァルトの口元へと持っていく。
「ヴァルト様、あーんですわ」
ジークヴァルトも何も言わずに唇を開き、リーゼロッテは慣れた手つきでそれを口の中に押し込んだ。お互いにモグモグしながら見つめ合う。この一連の流れ作業に、リーゼロッテはもう慣れてしまった。
「リーゼロッテ様……今、異形を浄化されていましたよね?」
紅茶をテーブルの上に置きながら、マテアスが驚いた声で聞いてくる。その問いにリーゼロッテは一度視線をさ迷わせてから、毅然とした態度でマテアスにきっぱりと返した。
「いいえ、あれは浄化ではないわ。あの子が自発的に天に還っただけよ」
「え? ですが、あれはどう見ても……」
(まずいわ。あれを浄化と認めてしまうと、ヴァルト様に止められてしまうかも)
心配性のジークヴァルトが、一度却下したことを撤回することはまずあり得ない。リーゼロッテはなんとかそれだけは避けようと、もう一度マテアスに向かって強めに言った。
「いいえ、あの子は自分で天に還ったの。だって、わたくし、浄化の力は使っていないもの」
リーゼロッテはいつもやっているように、小鬼の瞳をきゅるんとさせる程度にしか力を使わなかった。いや、使ったというより、自然と溢れ出るものをそっと振りまいただけだ。それ以上のことは何もしていない。
そんなリーゼロッテの頑なな態度に、マテアスは戸惑った。リーゼロッテはずっと異形の浄化をしたそうにしていた。常日頃、マテアス達が行う浄化とはまったく異質な方法だったが、異形は確かに浄化されたのだ。それをよろこぶでもなく、むしろあれは浄化ではないと言い張るリーゼロッテの真意が測れない。
「あれは浄化じゃないもの」
もう一度ぽつりと言って、リーゼロッテはその瞳にもりもりと涙をためだした。小さな唇をへの字に曲げて、ふるふると震わせている。
残念に思いつつも、そこは諦めの境地で受け入れているリーゼロッテだ。
不意に横から「あーん」と菓子が差し出され、リーゼロッテは条件反射のようにそれを口にした。それから、迷いなくテーブルの上にある一口大のクラッカーを手に取り、それをそのまま隣に座ったジークヴァルトの口元へと持っていく。
「ヴァルト様、あーんですわ」
ジークヴァルトも何も言わずに唇を開き、リーゼロッテは慣れた手つきでそれを口の中に押し込んだ。お互いにモグモグしながら見つめ合う。この一連の流れ作業に、リーゼロッテはもう慣れてしまった。
「リーゼロッテ様……今、異形を浄化されていましたよね?」
紅茶をテーブルの上に置きながら、マテアスが驚いた声で聞いてくる。その問いにリーゼロッテは一度視線をさ迷わせてから、毅然とした態度でマテアスにきっぱりと返した。
「いいえ、あれは浄化ではないわ。あの子が自発的に天に還っただけよ」
「え? ですが、あれはどう見ても……」
(まずいわ。あれを浄化と認めてしまうと、ヴァルト様に止められてしまうかも)
心配性のジークヴァルトが、一度却下したことを撤回することはまずあり得ない。リーゼロッテはなんとかそれだけは避けようと、もう一度マテアスに向かって強めに言った。
「いいえ、あの子は自分で天に還ったの。だって、わたくし、浄化の力は使っていないもの」
リーゼロッテはいつもやっているように、小鬼の瞳をきゅるんとさせる程度にしか力を使わなかった。いや、使ったというより、自然と溢れ出るものをそっと振りまいただけだ。それ以上のことは何もしていない。
そんなリーゼロッテの頑なな態度に、マテアスは戸惑った。リーゼロッテはずっと異形の浄化をしたそうにしていた。常日頃、マテアス達が行う浄化とはまったく異質な方法だったが、異形は確かに浄化されたのだ。それをよろこぶでもなく、むしろあれは浄化ではないと言い張るリーゼロッテの真意が測れない。
「あれは浄化じゃないもの」
もう一度ぽつりと言って、リーゼロッテはその瞳にもりもりと涙をためだした。小さな唇をへの字に曲げて、ふるふると震わせている。