氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「カイ様!?」

 そこに立っていたのは騎士服をきっちりと着込んだカイだった。いつからそこにいたのだろう。ちょうどマテアスがカイに紅茶を運んでいるところだった。

「デルプフェルト様。こちらは前回と同じ茶葉ですが、少し()れ方を工夫してみたのです。ぜひご賞味いただければと」
「ああ、それは楽しみだね」

 丁寧(ていねい)な物腰で紅茶を差し出すマテアスに、にっこり笑いながら返すカイ。お互いにこやかなはずなのに、空気が張り詰めているように感じるのは気のせいだろうか。

「まろやかな舌触りに、なにより香りがひきたってるね。茶葉の量と蒸らす時間を変えたのかな?」
「さすがはデルプフェルト様、素晴らしい味覚と洞察(どうさつ)(りょく)でございますね」
「いや、従者君のたゆまぬ努力には感服(かんぷく)するよ」

 はははははとひとしきり笑顔の応酬(おうしゅう)を続けた後、マテアスがすっと真顔になった。

「それはさておきまして、デルプフェルト様。本日はどのような向きでおいでくださったのでしょう。先ぶれもなしのご訪問など、いかにデルプフェルト様といえど、無作法(ぶさほう)(きわ)まりないと思われますが」
火急(かきゅう)の案件が発生してね。そんな怖い顔しないでよ。ほら、これ、渡しとくから」

 渡された書類に目を通すと、マテアスは一瞬はっとして、それをそのままジークヴァルトに手渡した。書類は王の勅命(ちょくめい)が書かれたものだ。公爵家の視察(しさつ)と、奥書庫(おくしょこ)閲覧(えつらん)を許可せよとの内容だった。

 常識的に考えてこの程度の内容で、王(みずか)(めい)(くだ)すことなどあり得ない。カイはイジドーラに頼み込んで、この勅命(ちょくめい)(しょ)をもぎ取ってきたのだ。

「どうしても今日中に確認しておきたいことがあるんです」
「……わかった。マテアス、手配を」
「承知いたしました。書庫の(おく)(とびら)を開けるとなると、少々お時間いただくことになりますがよろしいですか?」
「今日は一日時間があるから待ってるよ」

 マテアスににこやかに返すと、カイはジークヴァルトに顔を向けた。

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