氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「待っている間に、泣いている異形の調査をさせていただけると助かるんですけど」
「ああ、わかった。マテアス」
「では誰か案内人をご用意いたします」
「だったら、そこにいるあの()、貸してもらえる?」

 カイが壁際(かべぎわ)で静かに(ひか)えていた侍女を指さした。

「ああ、ベッティさん、ご案内をお願いしてもよろしいですか?」
「はいぃ、騎士様を泣き虫ジョンの元にご案内すればよろしいのですねぇ。承知いたしましたぁ」

 ベッティについて出ていこうとする間際(まぎわ)、カイがジークヴァルトを振り返った。

「そうだ、ジークヴァルト様。書庫での調べ物に、リーゼロッテ嬢をお借りしてもよろしいですか?」

 人手があった方が助かるので、とカイが付け加えると、ジークヴァルトはぎゅっと眉間にしわを寄せた。

「そんな顔をしないでくださいよ。ちゃんとカークも連れていきますから」

 カイが呆れたように言うと、ジークヴァルトの眉間のしわがさらに深くなる。

「わたくし、お手伝いできることがあるのなら、カイ様のお力になりたいですわ」

 異形も十匹きゅるんとさせた。今日はもうやることもないので、(ひま)を持て余しているリーゼロッテにしてみれば、渡りに船な話だった。

「……わかった。だが無茶はするなよ」
「はい、お約束いたしますわ」

 書庫でどんな無茶ができるというのだ。相も変わらず心配性なジークヴァルトに、リーゼロッテは呆れながらも微笑みを返した。

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