氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 不意にカイの表情が(かた)くなる。

「もう一度だけ確認するけど、アンネマリー嬢には龍のあざはなかったんだよね?」
「はいぃ、王妃様の元でアンネマリー様のお世話をさせていただきましたがぁ、アンネマリー様のお体にはどこにもあざはみつかりませんでしたぁ」
「そう……」

 ベッティは王妃の離宮でアンネマリー付きの侍女をしていた。湯あみ世話や体のマッサージなどを(ほどこ)す侍女ならば、(ろう)せず龍のあざの有無(うむ)を確認することができるのだ。

 カイは王妃の指示の元、ハインリヒの託宣の相手を探している。ベッティはそのカイの下で働く子飼いの部下のようなものだ。ベッティは王家の血筋が入った貴族の屋敷に潜入(せんにゅう)しては、龍のあざをもつ者がいないかをくまなく調べていた。

「じゃあそろそろベッティには、こっちに戻ってきてもらおうかな? これからはまた夜会の潜入がメインになりそうだし、やっぱりベッティがいないといろいろ面倒だしね」
「……火遊びもほどほどにしてくださいよぅ」
「ご夫人たちとの逢瀬(おうせ)は、情報収集の手段なだけだよ」

 肩をすくませて笑うカイに、ベッティはジト目を返した。ベッティの早業(はやわざ)メイクは、カイの(あと)始末(しまつ)のために否応(いやおう)なしに身についたスキルなのだ。

「いつか誰かに()されたりしても、ベッティは知りませんからねぇ」
「はは、そんなへまはしないよ」

 カイがこんな遊び人になってしまったのは、ひとえにあの男のせいだ。冬なるとふらりと帰ってくる貴族らしからぬ男を思い浮かべて、ベッティはその頬をぷっと膨らませた。

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