氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 気を取り直してカイはルイーズに笑顔を向けた。

「ルイーズ殿、助かりました。これで進展が期待できそうです」
「このことを王妃様には……?」

 不安げにルイーズの瞳が揺れる。

「イジドーラ様にはすべてが明らかになった後、オレからきちんと報告します。いたずらにつらいことを思い出させたりはしませんよ」

 アニータが行方知れずとなったのが、イジドーラにとって最も過酷だった時期と同じくしていることに、ルイーズも気づいたのだろう。

 当時を振り返るような質問を、イジドーラに投げかけるつもりはカイにはなかった。そんなことをするくらいなら、自分が単身でグレーデン家に殴り込む方がよほどましというものだ。
 ルイーズを安心させるように、カイはもう一度笑顔を返した。

(グレーデン家か……。さて、どうやって(もぐ)()む?)

 ルイーズと別れたあと、考えを(めぐ)らせながら進む廊下の先に、ジークヴァルトの後ろ姿を認めた。思わずカイの口から「あっ」と声が漏れる。
 そうだ、グレーデンと言えば、フーゲンベルク公爵家の傍系貴族だ。なぜ、そんなことに気づかなかったのだろう。

「ジークヴァルト様! リーゼロッテ嬢を貸してください!」

 思わずついて出た言葉に、振り返ったジークヴァルトは、想像通りの渋い顔を返してきた。普段ならば、リーゼロッテをネタにからかってやりたいところだが、今はそんなことをしている場合ではない。
 何はなくとも、まずはグレーデン家で情報収集だ。アニータ・スタンの背後に貴族の影が見いだせたのなら、アニサ本人に会いに行く必要もあるだろう。

 ジークヴァルトからなんとか譲歩(じょうほ)を取り付けて、カイは次いでハインリヒの元へと急ぎ向かった。

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