氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 それなら安心できるとリーゼロッテが息をついたところに、エマニュエルが「ですが……」と顔を曇らせた。

「ウルリーケ様は元王族の方ですので、少々作法に厳しい面がありまして……。今回、お付きの者はエラ様に行っていただくのがよろしいでしょうね」

「ウルリーケ様はエマニュエル様を、(こころよ)く思っていらっしゃいませんからねぇ」

 紅茶を差し出しながら、マテアスが困ったように眉を下げる。リーゼロッテがマテアスを不安げに見上げると、エマニュエルは安心させるように微笑んだ。

「わたしは元使用人ですので、ウルリーケ様にそう扱われるのも仕方ないことです。せっかくのお茶会ですから、わたしが付き添って、ウルリーケ様のご機嫌を損ねるのは得策ではありませんわ」

 グレーデン家は厳格な家風であると、以前にエマニュエルが言っていたことを思い出す。

「ウルリーケ様は王族出身ということもあり、とにかく気位の高いお方ですからねぇ。グレーデン侯爵家の実権を握っているのは実質ウルリーケ様で、陰ではグレーデン家の女帝(じょてい)などと呼ばれているのですよ」

 マテアスの言葉に、シンデレラの継母(ままはは)のようなイメージが()いてくる。初めてのお茶会にしてはハードルが高くはないかと、急に不安がもたげてきた。

「わたくし、大丈夫かしら……」
「ふふ、リーゼロッテ様は普段通りで問題ないですわ。令嬢の(かがみ)のようなリーゼロッテ様をご覧になれば、ウルリーケ様もきっとご満足なさいます」

 そう言われても不安はぬぐわれない。

「無理に行かなくてもいい」
「え? ですが、きちんと行ってまいりますわ」

 きっとジークヴァルトの婚約者としてふさわしい令嬢か、品定めするためのお茶会なのだろう。公爵家に恥をかかせないためにも、ロッテンマイヤーさん直伝のマナーをフルに活用しなくては。
 リーゼロッテがそう意気込んでいると、ジークヴァルトが眉間にしわを寄せた。

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