氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 ユリウスも力ある者だ。自分の力にあてられているのだと悟り、リーゼロッテはさっと顔色を変えた。

「心配無用だ。ジークヴァルトからこれを預かっている」
 そういってユリウスは、ウィンクしながら青い守り石を取り出した。

「そちらはジークヴァルト様の……?」
「ああ、これを持ってりゃ少しはましだ」

 頷くユリウスに、エラが不思議そうな顔をした。無知なる者のエラに異形の存在も自分の力のことも話せない。リーゼロッテは仕方なく曖昧(あいまい)に頷き返した。

 しばらくの後、馬車が速度を落としてゆっくりと止まった。ユリウスが確かめるように窓の外を眺めると「選手交代だ」と言って外に出ていく。ほどなくして、別の護衛騎士がひとり、馬車の中に乗り込んできた。

「やあ、リーゼロッテ嬢。今日はよろしくね?」
「え? カイ様⁉」

 ()頓狂(とんきょう)な声が出る。今日のカイは公爵家の護衛服を着ていたので、話しかけられるまで彼だと気づけなかった。逆光でわからなかったが、よく見ると灰色の髪は暗い色に染められているようだ。

「エラ嬢も久しぶり」
「デルプフェルト様、ご無沙汰しております」

 驚きつつもエラは席を譲ろうと立ち上がろうとする。カイはそれを制して「あ、いいよ、エラ嬢はそっちに座ってて」と扉を閉めた。
 ユリウスがいた席にカイが座ると、馬車は再び軽やかに走り出した。

「あの、カイ様……今日はわざわざ来てくださったのですか?」

 エーミールは別の用事があるとかで、今日のお茶会には不参加だ。あんなエーミールでもいてくれた方が心強かったとに、ちょっぴり思ったリーゼロッテだった。グレーデン家の女帝という強みマックスな存在に、やはり臆してしまっているのかもしれない。

「うん? まあ、わざわざというか……。あ、エラ嬢、肩にゴミが」

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