氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「物語でよくそういう話がございますでしょう? わたくしはおとりで、カイ様はその隙に捜査をなさいますのね」
「おとりというか、リーゼロッテ嬢は普通にお茶会を楽しんでくればいいよ。今回は捜査というより、ある人物と接触を図りたいだけだから」
「まあ! 聞き込み調査ですわね!」
前のめりに言うと、カイはぷっとふき出した。
「ほんとリーゼロッテ嬢って変わってるね」
深窓の令嬢のくせして聡すぎる。それでいて世間知らずで素直でまっさらだ。苦労知らずの純真無垢な令嬢に違いはないが、それだけではない何かを秘めている。
その時カイにもたれかかっているエラが、小さく身じろぎした。密談できる時間はもうわずかだ。
「リーゼロッテ嬢、オレが何を調べているか、察しはついてる?」
「……王子殿下の託宣のお相手ですか?」
試すように問うと、リーゼロッテは迷いながらもそう口にした。カイは満足そうに頷いてから、流れる景色に目をむける。
「本来ならいるはずの託宣の相手が、見つからないまま今に至っているんだ。貴族女性は調べつくしたけど、該当する者はいなかった。全員が浸泉式であざの有無を確認されているはずだから、当然と言えば当然なんだけど」
浸泉式とは生まれたばかりの赤ん坊に、国の守護神である青龍の祝福を授ける儀式のことだ。赴いた神官が、聖水が入れられた桶に裸の赤ん坊を浸けるというもので、貴族に生まれた者は、必ずこれを受ける義務がある。
「では、浸泉式は龍のあざを調べるためのものなのですか?」
「そういうこと。祝福を授けるというのは建前だよね。ねえ、リーゼロッテ嬢は、龍の祝福コンテストって聞いたことある?」
突然、話題を変えるようにカイが問う。いきなり話が飛んで、リーゼロッテは小首をかしげた。
「市井のお祭りですわよね。あざの形の美しさを競うという」
以前、王都の街中で馬車から見かけた祭りを思い出す。庶民の祭りだと、エマニュエルは言っていた。
この国では生まれつきのあざは、龍が授けた祝福としてよろこばれるものとされている。そのあざの形を競う祭りが、龍の祝福コンテストだ。
「おとりというか、リーゼロッテ嬢は普通にお茶会を楽しんでくればいいよ。今回は捜査というより、ある人物と接触を図りたいだけだから」
「まあ! 聞き込み調査ですわね!」
前のめりに言うと、カイはぷっとふき出した。
「ほんとリーゼロッテ嬢って変わってるね」
深窓の令嬢のくせして聡すぎる。それでいて世間知らずで素直でまっさらだ。苦労知らずの純真無垢な令嬢に違いはないが、それだけではない何かを秘めている。
その時カイにもたれかかっているエラが、小さく身じろぎした。密談できる時間はもうわずかだ。
「リーゼロッテ嬢、オレが何を調べているか、察しはついてる?」
「……王子殿下の託宣のお相手ですか?」
試すように問うと、リーゼロッテは迷いながらもそう口にした。カイは満足そうに頷いてから、流れる景色に目をむける。
「本来ならいるはずの託宣の相手が、見つからないまま今に至っているんだ。貴族女性は調べつくしたけど、該当する者はいなかった。全員が浸泉式であざの有無を確認されているはずだから、当然と言えば当然なんだけど」
浸泉式とは生まれたばかりの赤ん坊に、国の守護神である青龍の祝福を授ける儀式のことだ。赴いた神官が、聖水が入れられた桶に裸の赤ん坊を浸けるというもので、貴族に生まれた者は、必ずこれを受ける義務がある。
「では、浸泉式は龍のあざを調べるためのものなのですか?」
「そういうこと。祝福を授けるというのは建前だよね。ねえ、リーゼロッテ嬢は、龍の祝福コンテストって聞いたことある?」
突然、話題を変えるようにカイが問う。いきなり話が飛んで、リーゼロッテは小首をかしげた。
「市井のお祭りですわよね。あざの形の美しさを競うという」
以前、王都の街中で馬車から見かけた祭りを思い出す。庶民の祭りだと、エマニュエルは言っていた。
この国では生まれつきのあざは、龍が授けた祝福としてよろこばれるものとされている。そのあざの形を競う祭りが、龍の祝福コンテストだ。