氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あの祭りは、実は王家主催で行われているんだ。そのことは伏せられてるけどね」
「王家の主催で?」
「うん、あれは市井にまぎれた貴族の庶子……その中でも託宣を受けた者を探すことが目的だから。つまり、龍のあざを持つ者を見つけるための祭りなんだ」
「それで龍の祝福コンテストなのですね……」

 龍のあざは絵にかいたような文様のようなあざだ。そんなあざを持つ者ならば、莫大な賞金を目当てに名乗りを上げることだろう。

「それでも(いま)だに、ハインリヒ様の託宣の相手を見つけられないでいる。だけど今回、手がかりになりそうな情報が得られそうなんだ」

 そういうことならばとリーゼロッテは力強く頷いた。

「カイ様、お任せくださいませ! わたくし、立派なおとり役を務めさせていただきますわ!」
「はは、ありがたいけど、普通にお茶会に参加するだけでいいからね? リーゼロッテ嬢に危ないことされると、オレ、ジークヴァルト様に殺されちゃうよ」

 リーゼロッテがそんな馬鹿なという顔をすると、カイは思い出したように(ふところ)から何かを取り出した。

「とりあえず、これも渡しとこうかな」

 見ると差し出されたのはジークヴァルトの守り石だった。

「さっきレルナー殿から渡されたんだ。持ってないと瀕死になるからって」
「カイ様はお持ちでなくて大丈夫なのですか?」
「うん、間もなく到着しそうだし、リーゼロッテ嬢が持っていた方が、何かあったときに安心でしょ。それに、エラ嬢に触れているとすごく快適。無知なる者ってどうなってるんだろう?」

 カイが不思議そうに、眠っているエラのあちらこちらをまさぐろうとする。リーゼロッテは慌ててその手を制した。

「カイ様!」
「はは、冗談だよ」

 笑いながらエラの体を馬車の壁に預けると、カイは素早い動きで向かいの席に移動する。そのタイミングで、エラが慌てたように体を起こした。

「……はっ! わたしってば寝てしまっていましたか!?」
「え……いいえ、そんなことはないと思うわよ?」

 誤魔化(ごまか)すようにリーゼロッテが言うと、馬車が大きな門をくぐった。

「グレーデン家に到着したみたいだね」

 窓の外に目を向けると、降り積もる雪の中にそびえ立つ、灰色の屋敷が目に入った。フーゲンベルク家の城のようなそれとは比べものにはならないが、侯爵家の屋敷も長い歴史を感じさせる。

 広い敷地をしばらく進んで、ようやく馬車はその屋敷へとたどり着いた。

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