氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あれはジークヴァルトが寄越したのね」
そう言われてはっと顔を上げる。ウルリーケの視線は、確実にカークの姿を捉えていた。
「ここでは何も起きないというものを。しょうのない子だこと」
とげとげしく聞こえるが、とがめているようには思えなかった。リーゼロッテは思い切って完全無欠の淑女の笑みを作り、ウルリーケへと向けてみた。
「ジークヴァルト様は過保護でいらっしゃいますから」
「睦まじくやっているのならそれでいいわ」
ウルリーケが興味なさげに言うと、メイドが静かに紅茶を差し出してきた。そのまま無言で頭を下げ、すぐに奥へと下がっていく。
「おあがりなさい」
つんと顎を反らされ、リーゼロッテは慎重な手つきでティーカップを手に取った。ふわりと上質な香りがする。一口含んで、リーゼロッテの口元は自然と笑みを作った。
「こちらは王家で愛飲されている紅茶ですわね。香りが高くてとてもおいしいですわ」
カイに特別に同じものを淹れてもらったことを思い出して、リーゼロッテはウルリーケに向けてふわりと笑った。
「お前は、小憎らしいくらいマルグリットにそっくりね」
不意にそう言われ、出だしから対応を間違えてしまったのだと、リーゼロッテは滅茶苦茶焦っていた。掛け違えたボタンをはめなおすことは難しい。だが、なんとか挽回しなくては、ジークヴァルトの顔をつぶすことになる。
焦りを顔には出さず、リーゼロッテは曖昧に笑顔を返した。
「夜会でバルバナス様にも同じことを言われましたわ」
「バルバナスに? そう、めずらしく白の夜会に出席したそうね。あの子もいい年をして、いつまでもふらふらと。本当に困ったものだわ」
女帝の手にかかれば、王兄バルバナスもあの子扱いのようだ。
そう言われてはっと顔を上げる。ウルリーケの視線は、確実にカークの姿を捉えていた。
「ここでは何も起きないというものを。しょうのない子だこと」
とげとげしく聞こえるが、とがめているようには思えなかった。リーゼロッテは思い切って完全無欠の淑女の笑みを作り、ウルリーケへと向けてみた。
「ジークヴァルト様は過保護でいらっしゃいますから」
「睦まじくやっているのならそれでいいわ」
ウルリーケが興味なさげに言うと、メイドが静かに紅茶を差し出してきた。そのまま無言で頭を下げ、すぐに奥へと下がっていく。
「おあがりなさい」
つんと顎を反らされ、リーゼロッテは慎重な手つきでティーカップを手に取った。ふわりと上質な香りがする。一口含んで、リーゼロッテの口元は自然と笑みを作った。
「こちらは王家で愛飲されている紅茶ですわね。香りが高くてとてもおいしいですわ」
カイに特別に同じものを淹れてもらったことを思い出して、リーゼロッテはウルリーケに向けてふわりと笑った。
「お前は、小憎らしいくらいマルグリットにそっくりね」
不意にそう言われ、出だしから対応を間違えてしまったのだと、リーゼロッテは滅茶苦茶焦っていた。掛け違えたボタンをはめなおすことは難しい。だが、なんとか挽回しなくては、ジークヴァルトの顔をつぶすことになる。
焦りを顔には出さず、リーゼロッテは曖昧に笑顔を返した。
「夜会でバルバナス様にも同じことを言われましたわ」
「バルバナスに? そう、めずらしく白の夜会に出席したそうね。あの子もいい年をして、いつまでもふらふらと。本当に困ったものだわ」
女帝の手にかかれば、王兄バルバナスもあの子扱いのようだ。