氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ウルリーケ様は、普段はどうなさっておられるのでしょう? エーミール様に祓っていただいているのですか?」

 守り石はうやむやにして渡してしまおう。ジークヴァルトには事後報告をして、了承を得たことを後日ウルリーケに手紙で伝えればいい。そう思って、話題を変えようとエーミールの名を口にした。かわいい孫の話題なら、きっと話も弾むに違いない。

「ふん、あの子はここに近寄りもしない」
 憎々(にくにく)し気な口調は、今日一番と言えるものだった。

(エーミール様、めっちゃ嫌われてる!?)

「まあ! エーミール様もいけない方ですわね」

 もうエーミールは悪者にしてしまえ。こんなにも弱っている祖母を放っておくなど、孫として、人として、言語道断な振る舞いだ。

「ウルリーケ様。よろしければ、またわたくしとおしゃべりしていただけますか?」
「……お前は誰に似たというのかしら? とてもマルグリットの娘とは思えないわ」

 よほど母が気に入らなかったのだろうか? リーゼロッテはかわいらしく小首をかしげて無邪気に笑って見せた。

「ふふ、だってわたくしはわたくしですもの。マルグリット母様とは別の人間ですわ」
「ふん、それもそうね。いいでしょう。いつでもここへ来るといい」

 ウルリーケはそういった後、再び温室の外に視線を向けた。

「……少し疲れたわ」
 そう言って、ウルリーケは静かに立ち上がった。すぐさまメイドがやってきて、支えるようにそのそばに立つ。

「お前はもうしばらくここで景色を楽しむといいわ。ここからの眺めは、昔からずっと変わらない……」

 最後の方はぽつりと漏らす。そのまま、振り返りもせず、ウルリーケはメイドに付き添われてその場を後にした。

(なんだかおさびしい方……)
 その奥に潜む孤独を感じ取って、リーゼロッテは静かに温室の外の雪景色に目を向けた。

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