氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
カイは静かに、だが僅かに足音をたてながら、その女性へと近づいて行った。
「いやだわ。まさか本当に来るだなんて」
そう言いながらたたずんでいた女性が肩越しに振り返る。その表情は言葉通りに、カイを歓迎しているようには見えなかった。
「珍しい方から文が届いたと思ったら、思いもよらない者の名が出るんですもの。本当に驚いたわ。それでお前は、こんなところまで何をしに来たというの? デルプフェルトの忌み子」
ルイーズが事前に手紙を送ってくれたのだろう。イジドーラとグレーデン家はあまりいい仲ではないが、ルイーズは前王妃セレスティーヌと共に隣国からやってきた女官だ。セレスティーヌの死後もこの国にとどまり、今ではディートリヒ王によってそれなりの地位と力を与えられている。
「カミラ・グレーデン侯爵夫人、お寛ぎのところ失礼します。カミラ様は相変わらずのお美しさですね。まぶしい限りです」
「そんな浮ついた言葉を言うために、わざわざ来たわけではないのでしょう? さっさと要件を済ませてちょうだい。こんなふうにお前と会っているとエメリヒに知れたら、お前もわたくしもだだでは済まされないわ」
忌々しそうに言って、カミラは視線を外の雪景色へと戻した。その背にカイは静かに告げる。
「カミラ様はアニータ・スタン伯爵令嬢をご存じですよね? 彼女について、あなたが知り得るすべてのことを教えていただきたい」
「アニータ・スタン?」
不思議そうに小首をかしげたカミラは、そのあとゆっくりとカイに向き直った。不思議顔から一転、次第に喜色を含んだ表情となる。
「ふ……ふふ、そう、そういうこと」
忍び笑いをこらえるように口元に手を当てる。どうにか笑いを収めてカミラはカイに再び視線を向けた。
「王子殿下の託宣の相手が、いまだに見つからないのですものね。それで、ここにきてようやくアニータにたどり着いたというわけね」
愚者を見下すかのように、カミラはころころと笑った。次いで、思わせぶりな視線をカイに向けてくる。
「いやだわ。まさか本当に来るだなんて」
そう言いながらたたずんでいた女性が肩越しに振り返る。その表情は言葉通りに、カイを歓迎しているようには見えなかった。
「珍しい方から文が届いたと思ったら、思いもよらない者の名が出るんですもの。本当に驚いたわ。それでお前は、こんなところまで何をしに来たというの? デルプフェルトの忌み子」
ルイーズが事前に手紙を送ってくれたのだろう。イジドーラとグレーデン家はあまりいい仲ではないが、ルイーズは前王妃セレスティーヌと共に隣国からやってきた女官だ。セレスティーヌの死後もこの国にとどまり、今ではディートリヒ王によってそれなりの地位と力を与えられている。
「カミラ・グレーデン侯爵夫人、お寛ぎのところ失礼します。カミラ様は相変わらずのお美しさですね。まぶしい限りです」
「そんな浮ついた言葉を言うために、わざわざ来たわけではないのでしょう? さっさと要件を済ませてちょうだい。こんなふうにお前と会っているとエメリヒに知れたら、お前もわたくしもだだでは済まされないわ」
忌々しそうに言って、カミラは視線を外の雪景色へと戻した。その背にカイは静かに告げる。
「カミラ様はアニータ・スタン伯爵令嬢をご存じですよね? 彼女について、あなたが知り得るすべてのことを教えていただきたい」
「アニータ・スタン?」
不思議そうに小首をかしげたカミラは、そのあとゆっくりとカイに向き直った。不思議顔から一転、次第に喜色を含んだ表情となる。
「ふ……ふふ、そう、そういうこと」
忍び笑いをこらえるように口元に手を当てる。どうにか笑いを収めてカミラはカイに再び視線を向けた。
「王子殿下の託宣の相手が、いまだに見つからないのですものね。それで、ここにきてようやくアニータにたどり着いたというわけね」
愚者を見下すかのように、カミラはころころと笑った。次いで、思わせぶりな視線をカイに向けてくる。