氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「龍の託宣の存在をご存じなのなら、話は早いです。あなたに拒否権はありません。すべてをお話しいただきたい」
「ふふ、いいわ。話せることは全部話してあげる。それで、何から話せばいいのかしら?」
「アニータ嬢が王城で行方不明になる直前のことを」
「ふうん? そこまでは調べがついているのね……。で、アニータはまだ生きているの?」
「それを知ってどうするんです?」
カイが低い声で返すと、カミラは肩を大仰にすくませた。
「旧知の令嬢の安否を気遣って何が悪いというの? まあ、いいわ。よく聞きなさい、デルプフェルトの忌み子。あの娘の秘密を全部教えてあげる」
含みを持たせた笑みを乗せながら、カミラは自分の口元に指をあてた。
「アニータはね、いなくなる直前に子供を身籠っていたわ。身籠ってはいけない相手の子供をね」
「身籠ってはいけない相手……?」
後宮に出入りできる男は王族と一部の使用人だけだ。だが、ルチアの見事な赤毛は、王族の姿を彷彿とさせる。
貴族名鑑に乗っていたアニータは、どこにでもいるような茶色の髪だった。その子供が赤毛ならば、父親は赤毛の誰かという可能性が高い。無論、ルチアの母アニサの正体が、本当にアニータであった場合の話だが。
今現在いる赤毛の王族は、ディートリヒ王と王兄バルバナスだ。十四年前ということを考えると、前王フリードリヒもその中に入るだろう。
(病気で臥せっていた前王が父親である可能性は低いだろうな。それに当時ディートリヒ王は、イジドーラ様を手に入れるために躍起になっていた時期だ。そんなときに他の女に手を出すとは思えない……)
だとすると、バルバナスだろうか? だが、バルバナスはこの国の在り方に大きな疑問を抱いている。王城にはめったに近寄らないし、自らの血を残すことを厭い、いまだ結婚せずに逃げ回っているのだ。そんな男がわざわざ後宮で、子をなすような行為に至るとは考えにくい。
「ふふふ、お前が考えている相手はみな見当違いよ」
見透かすようにカミラが意地の悪い笑みを向ける。
「子供の父親を知りたいのでしょう? 心配しなくてもちゃんと教えてあげるわ」
そこで一度言葉を切って、カミラは指折り数え始めた。
「ふふ、いいわ。話せることは全部話してあげる。それで、何から話せばいいのかしら?」
「アニータ嬢が王城で行方不明になる直前のことを」
「ふうん? そこまでは調べがついているのね……。で、アニータはまだ生きているの?」
「それを知ってどうするんです?」
カイが低い声で返すと、カミラは肩を大仰にすくませた。
「旧知の令嬢の安否を気遣って何が悪いというの? まあ、いいわ。よく聞きなさい、デルプフェルトの忌み子。あの娘の秘密を全部教えてあげる」
含みを持たせた笑みを乗せながら、カミラは自分の口元に指をあてた。
「アニータはね、いなくなる直前に子供を身籠っていたわ。身籠ってはいけない相手の子供をね」
「身籠ってはいけない相手……?」
後宮に出入りできる男は王族と一部の使用人だけだ。だが、ルチアの見事な赤毛は、王族の姿を彷彿とさせる。
貴族名鑑に乗っていたアニータは、どこにでもいるような茶色の髪だった。その子供が赤毛ならば、父親は赤毛の誰かという可能性が高い。無論、ルチアの母アニサの正体が、本当にアニータであった場合の話だが。
今現在いる赤毛の王族は、ディートリヒ王と王兄バルバナスだ。十四年前ということを考えると、前王フリードリヒもその中に入るだろう。
(病気で臥せっていた前王が父親である可能性は低いだろうな。それに当時ディートリヒ王は、イジドーラ様を手に入れるために躍起になっていた時期だ。そんなときに他の女に手を出すとは思えない……)
だとすると、バルバナスだろうか? だが、バルバナスはこの国の在り方に大きな疑問を抱いている。王城にはめったに近寄らないし、自らの血を残すことを厭い、いまだ結婚せずに逃げ回っているのだ。そんな男がわざわざ後宮で、子をなすような行為に至るとは考えにくい。
「ふふふ、お前が考えている相手はみな見当違いよ」
見透かすようにカミラが意地の悪い笑みを向ける。
「子供の父親を知りたいのでしょう? 心配しなくてもちゃんと教えてあげるわ」
そこで一度言葉を切って、カミラは指折り数え始めた。