氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「わたしからも重ねてお願いいたします。もちろん、旦那様の行いを不快に感じられるようでしたら、遠慮なくこのマテアスにおっしゃってください。ああ……もし、おっしゃりづらいことであれば、エマニュエル様やエラ様にお話しくだされば、こちらで誠心誠意対処いたしますから……そう言えば、エラ様はご一緒ではないのですか?」
マテアスが周りを見渡しながら言った。
「エラはわたくしの社交界の準備でダーミッシュ家に残ってもらったの。それに、エラのお母様のお加減もあるし……」
「そうでございましたか。エデラー男爵夫人のお加減は快方に向かっているとのことで、何よりでございますね」
「ええ、でも、もう少しお母様のそばにいさせてあげたいの。一度こちらに来たら、なかなか戻ることはできないから……」
リーゼロッテの言葉にマテアスは、もっともだと言うように頷いた。
「忙しいところ引きとめてごめんなさい」
マテアスが書類を抱えていることを思い出し、リーゼロッテはすまなさそうに言った。
「とんでもございません。わたしは優秀な侍従ですので、この程度のことお茶の子さいさいでございます」
書類を軽く掲げて得意げに言うマテアスに、エッカルトがくいっと片眉を上げた。それを見たマテアスがそそくさとこの場を退場しようとする。
「あ、マテアス。ジークヴァルト様がお戻りになられたら、お話したいことがあるの。お時間が取れるときで構わないので、そうお願いしてほしいのだけれど……」
手にした小箱をぎゅっと握りしめ、リーゼロッテは慌ててマテアスに言った。先ほどはジークヴァルトに頼みごとができる雰囲気ではなかった。ジークヴァルトが城に向かうところだったのに、せっかくのチャンスを逃してしまったことが悔やまれる。
大切なアンネマリーのたっての願いだ。なんとかジークヴァルトにお願いしなくては。
「かしこまりました。主にはそのように申し伝えさせていただきます」
恭しく腰折ったあと、今度こそマテアスは廊下の向こうへと去っていった。
「では、参りましょう、リーゼロッテ様」
エッカルトに促されて、再び廊下を進み始める。部屋の前につくと、そこにはやはりカークが当たり前のように背筋を伸ばして立っているのだった。
マテアスが周りを見渡しながら言った。
「エラはわたくしの社交界の準備でダーミッシュ家に残ってもらったの。それに、エラのお母様のお加減もあるし……」
「そうでございましたか。エデラー男爵夫人のお加減は快方に向かっているとのことで、何よりでございますね」
「ええ、でも、もう少しお母様のそばにいさせてあげたいの。一度こちらに来たら、なかなか戻ることはできないから……」
リーゼロッテの言葉にマテアスは、もっともだと言うように頷いた。
「忙しいところ引きとめてごめんなさい」
マテアスが書類を抱えていることを思い出し、リーゼロッテはすまなさそうに言った。
「とんでもございません。わたしは優秀な侍従ですので、この程度のことお茶の子さいさいでございます」
書類を軽く掲げて得意げに言うマテアスに、エッカルトがくいっと片眉を上げた。それを見たマテアスがそそくさとこの場を退場しようとする。
「あ、マテアス。ジークヴァルト様がお戻りになられたら、お話したいことがあるの。お時間が取れるときで構わないので、そうお願いしてほしいのだけれど……」
手にした小箱をぎゅっと握りしめ、リーゼロッテは慌ててマテアスに言った。先ほどはジークヴァルトに頼みごとができる雰囲気ではなかった。ジークヴァルトが城に向かうところだったのに、せっかくのチャンスを逃してしまったことが悔やまれる。
大切なアンネマリーのたっての願いだ。なんとかジークヴァルトにお願いしなくては。
「かしこまりました。主にはそのように申し伝えさせていただきます」
恭しく腰折ったあと、今度こそマテアスは廊下の向こうへと去っていった。
「では、参りましょう、リーゼロッテ様」
エッカルトに促されて、再び廊下を進み始める。部屋の前につくと、そこにはやはりカークが当たり前のように背筋を伸ばして立っているのだった。