氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
神殿も教会も、季節の祭りごとや婚姻の許可、出生の届け出などの役割を担っているが、厳格でしきたり重視の神殿に対して、教会は平民向けに簡素化されより身近なものとなっていた。
王家の祭事を取りまとめる本神殿を総本山に、神殿・教会がいくつかの宗派で広がっているという図式だ。
「神官様……」
(ますますラノベっぽくなってきたわ……)
この世界には魔法はないが、もしかしたら自分が知らないだけで、神官などは秘密裏に操っているのではないか。そんな想像を巡らせていると、部屋に視察の一行が到着したとの知らせが来た。
「では、わたしたちも執務室へ向かいましょう」
エマニュエルに促されて自室を後にした。
廊下を出ると、リーゼロッテから距離を取りつつ、壁際に立っていたカークもゆっくりと歩き出す。ジークヴァルトに二メートル以内には近づくなと命令されているため、カークは律義にそれを守っていた。
公爵家の執務室の前に到着して、リーゼロッテはふと違和感を覚えた。
(あれ? 壁の一部が新しくなってる……)
執務室側の廊下の壁が、一部分アーチ状に真新しく白くなっている。人ひとりが通れそうなその跡は、そこだけ塗り替えるのも不自然に思え、穴をあけて埋めたような印象だった。
「そこは穴が開きましたので、埋めたのですよ」
「穴が……?」
「ええ……手違いで、ヨハン様が」
エマニュエルはそれ以上語らず、執務室の扉をノックする。しばらくすると、マテアスが扉を開けて顔を出した。
「リーゼロッテ様、視察の方がお待ちです。どうぞ中へ」
緊張しながらリーゼロッテは執務室に足を踏み入れた。
リーゼロッテが奥に進むと、応接用のソファに座っている騎士がひとり目に入った。
(神官様ではなくて、騎士団の方が来たのね)
騎士の灰色の髪を目にしたリーゼロッテは、思わず「あっ」と口にした。
「カイ様!?」
「やあ、リーゼロッテ嬢、久しぶりだね」
ゆっくりと立ち上がり、振り返った騎士はカイだった。王城で会った時と同じように、いたずらっぽく笑う。
「しばらく会わないうちに、すごく綺麗になったね、リーゼロッテ嬢」
そう言ってカイは、琥珀色の目を細めた。
王家の祭事を取りまとめる本神殿を総本山に、神殿・教会がいくつかの宗派で広がっているという図式だ。
「神官様……」
(ますますラノベっぽくなってきたわ……)
この世界には魔法はないが、もしかしたら自分が知らないだけで、神官などは秘密裏に操っているのではないか。そんな想像を巡らせていると、部屋に視察の一行が到着したとの知らせが来た。
「では、わたしたちも執務室へ向かいましょう」
エマニュエルに促されて自室を後にした。
廊下を出ると、リーゼロッテから距離を取りつつ、壁際に立っていたカークもゆっくりと歩き出す。ジークヴァルトに二メートル以内には近づくなと命令されているため、カークは律義にそれを守っていた。
公爵家の執務室の前に到着して、リーゼロッテはふと違和感を覚えた。
(あれ? 壁の一部が新しくなってる……)
執務室側の廊下の壁が、一部分アーチ状に真新しく白くなっている。人ひとりが通れそうなその跡は、そこだけ塗り替えるのも不自然に思え、穴をあけて埋めたような印象だった。
「そこは穴が開きましたので、埋めたのですよ」
「穴が……?」
「ええ……手違いで、ヨハン様が」
エマニュエルはそれ以上語らず、執務室の扉をノックする。しばらくすると、マテアスが扉を開けて顔を出した。
「リーゼロッテ様、視察の方がお待ちです。どうぞ中へ」
緊張しながらリーゼロッテは執務室に足を踏み入れた。
リーゼロッテが奥に進むと、応接用のソファに座っている騎士がひとり目に入った。
(神官様ではなくて、騎士団の方が来たのね)
騎士の灰色の髪を目にしたリーゼロッテは、思わず「あっ」と口にした。
「カイ様!?」
「やあ、リーゼロッテ嬢、久しぶりだね」
ゆっくりと立ち上がり、振り返った騎士はカイだった。王城で会った時と同じように、いたずらっぽく笑う。
「しばらく会わないうちに、すごく綺麗になったね、リーゼロッテ嬢」
そう言ってカイは、琥珀色の目を細めた。