氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「気持ちはわかるが、四六時中そばにいられるわけでないだろう? 正しい知識は武器になる。フーゲンベルク家にもその手の書物は多くあるはずだ」
「ヴァルト様、わたくしも頑張って勉強いたしますわ」

 そんな本があるのなら、むしろもっと早く教えてほしかった。そう思いながらも、リーゼロッテはジークヴァルトの顔を覗き込む。

「……わかった。だが、公爵家に帰ってからだ」

 いまだ不服そうなジークヴァルトを横目に、カイがおかわりの紅茶を差し出してきた。

「そうだ、リーゼロッテ嬢。もし公爵家の書庫で、日記とか見つけたらオレに教えてくれる?」
「日記ですか?」
「うん。託宣を受けた者は、日記を残すことが多いから。目隠しで言いたいことを言えないのを、遠回しな表現で記すことがあるんだ。読む人間が読めば、言いたい事がわかることもあって、それが手がかりになるかもしれないから」

 手がかりとは、王子の託宣の相手に関する事だろう。そう思い当たるとリーゼロッテは隣に座るジークヴァルトを仰ぎ見た。公爵家で見つけた書物を、勝手に教えるのもはばかれる。

「言えるのなら龍が良しとしたことだ。それは教えてもかまわない」

 ジークヴァルトはそっけなく言って、リーゼロッテの頭にポンと手を置いた。そのままくすぐるように髪を指に絡ませる。

「そういうことはふたりきりの時にだけやってくれ」

 ハインリヒはあきれたように首を振った。

< 457 / 684 >

この作品をシェア

pagetop