氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「こちらは宰相を務めているブラル伯爵だ」

 ジークヴァルトにそう言われ、リーゼロッテは慌てて礼をとった。

「リーゼロッテ・ダーミッシュでございます。お初に目にかかります、ブラル伯爵様」
「やはり、あなたがダーミッシュの妖精姫でしたか。いや、わたしの娘も先日、白の夜会でデビューしたもので。当日、ご挨拶ができなくて失礼しました」

 失礼も何も、途中で帰ってしまったのはこちらの方だ。リーゼロッテは慌てて首を振った。

「いいえ、こちらこそご挨拶が遅れて申し訳ございません」

 軽く礼をとった後、ブラル伯爵の顔を改めて見やった。たれ目だ。めっちゃたれ目だ。

(アンネマリーもたれ目気味だけど、この方はもう一度見たら忘れられないレベルだわ)

 吹き出しそうになるのを何とか堪えた。人様の顔の造作にケチをつけるなど、人としてどうかしている。

「おふたりは婚約関係にあるとお聞きしましたが、それは本当のようですね」

 ニコニコ顔で言われ、リーゼロッテの頬が朱に染まる。返答に困っていると、ジークヴァルトが口を開いた。

「ダーミッシュ嬢との婚約は王命だ」
「なるほど。マルグリット様にそっくりなご令嬢だと思ったら、王のご意向でしたか。わたしごときが詮索する話ではなさそうですね」

 うんうんと納得したようにブラル伯爵は頷いた。ジークヴァルトの対応を見ると、ブラル伯爵は龍の託宣の存在を知らないのだろう。

「いや、それにしてもよかった。フーゲンベルク公爵にこんなに愛らしい婚約者がいると知り、わたしは安心しましたよ」

 何度もうんうんと頷いているブラル伯爵は、本当に安堵している様子に見える。

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