氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 つかんでもつかんでもこの手は空を切ってしまう。チェーンを引きずりながら転がっていくその先に階段を認めて、リーゼロッテはほっと息をついた。階段下まで跳ね出た守り石は、しかしカエルのごとくぴょんぴょん跳ねて、段差をそのまま昇っていく。

(え? 嘘? なんで!?)

 重力を無視した跳躍に、リーゼロッテは夢中になってその後ろを追いかけた。スカートをつまみ上げ、必死にその後をついていく。階段を昇り切ったすぐ先の床に、守り石がぽつんと落ちている。それを認めたリーゼロッテは、淑女のたしなみも忘れてそこへと駆け寄った。
 素早い動きですくい上げ、青い守り石を胸元でぎゅっと握りしめる。

(よかった……)

 ほっとしつつもどうしてこんなことになったのかと、今さらながらに疑問が湧いてくる。しかし、今はそれどころではないと、すぐに気づいた。随分とジークヴァルトから離れてしまっている。

(まずいわ! 早く戻らなきゃ)

 ジークヴァルトが話に夢中になったままでいればいいのだが。自分があの場にいないことが知れたら、ジークヴァルトの過保護加減がさらに悪化するのは目に見えている。

 慌てて来た道を戻ろうとする。その瞬間、廊下の角から不意に人影が現れた。
 その人物とぶつかって、倒れそうになったリーゼロッテは身を縮こまらせた。両肩をぎゅっとつかまれ体を支えられる。

「申し訳ございません!」

 自分が邪魔になる場所でもたもたしていたのが原因だ。リーゼロッテは目の前にいる人物を、勢いよく見上げた。

「王子殿下……!?」

 すぐ目の前にハインリヒ王子がいる。いまだかつてない至近距離に、お互いが驚きの表情で見つめ合う。
 その刹那、ぶわりと目の前に熱を感じた。その熱風に押し出されるように、リーゼロッテの体が浮き上がる。

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