氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 青い瞳と目を合わせたまま、呆けたような声で言う。今はそんなことを言っている場合ではないのだが、そんな言葉しか出てこなかった。

「リーゼロッテ嬢! 怪我はない!?」

 階段を駆け下りてきたカイが、青い顔のままやってくる。確かめるように自分の体を見やるが、どこも痛むところはなかった。

「問題ございません。ジークヴァルト様が受け止めてくださいましたから……」

 そのタイミングで、お尻のあたりがもぞりとした。驚いて身じろぎすると、リーゼロッテのスカートの下から、異形が一匹、二匹、三匹と、順番に這い出てくる。

「あなたたち……!」

 それは先ほど応接室にいた異形の者だった。リーゼロッテのクッションとなるべくその下に飛び込んできたらしい。

 三匹の異形はリーゼロッテの前に並ぶと、まるで騎士のような礼をとった。緑にきらめく体の輪郭ががぼやけて、小さな異形は甲冑を着た立派な騎士へと変化した。三人の騎士はリーゼロッテのスカートの裾に、忠誠の口づけを落としたかと思うと、そのままふわりと消えていく。

『我々は主を守れなかった騎士のなれの果てでした。最後にあなたを守れて本当によかった……』

 かき消えそうな小さな声で言い残すと、三人の騎士は白く大気に溶けていく。声をかける間もなく、リーゼロッテはただそれを見送った。

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