氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「もしもこのまま、王子殿下のお相手がみつからなかったら……その時はどうなってしまうのですか?」
 口から漏れ出た問いは、半ば無意識のものだった。

「相手がいないことには、わたしは王位を継ぐことはできない。託宣を違えたとして、このわたし自身が星に堕ちるか……」

 その言葉にリーゼロッテがはっと顔を上げる。とんでもないことを聞いてしまったのだと今さら気づくが、すでに後の祭りだ。

「それだけならまだいいが……龍の加護がはずれたこの国は、最悪、破滅の道をたどるだろう」

 その言葉の重みに思考が止まる。

「ブラオエルシュタインが八百年以上もの間、平和を保ってこられたのは、龍の力に他ならない。その平穏が、今、狂おうとしている」
「ですが、託宣を違えることを、龍は絶対に許さないと……」

 思わずカイを振り返った。龍の託宣を阻もうとする者は、龍の鉄槌(てっつい)を受けて死を与えられる。公爵家の書庫で、確かにカイはそう言っていた。

「ならば、なぜ龍は、わたしの託宣の相手を隠すのだ?」

 冷たく言われて、はっと王子へと向き直る。しかし、王子はリーゼロッテを見てはいなかった。ただ、睨むように、始まりの王を見上げている。

 そのまましばしの沈黙が降りる。神聖なるこの空間では、静寂は重たい息苦しさにしかならなかった。
 助けを求めるように再びカイに視線を送るが、カイは口をはさむ気はないらしい。少し距離を開けた場所で、表情なくただ立っている。

 しぶるジークヴァルトを置いて、王子に連れられてここまでやってきた。カイは、王子と自分をふたりきりにしないためだけに、護衛としてついてきたのだろう。

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