氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 ふわりと微笑み、リーゼロッテは淑女の礼をとった。その動きと共に、(あざ)やかな緑の力がさざ波のように広がっていく。その波を追いかけて、周りの小鬼たちがぴょこぴょこと飛び跳ねた。

「はは、また可愛くしちゃうんだ」

 リーゼロッテの体から漏れた力に触れた異形たちが、なんだかちょこっと可愛くなっている。カイの視線を追って後ろを振り向くと、リーゼロッテは不服そうに唇を(とが)らせた。

「わざとやっているわけではありませんわ」
「あはは、ほめてるんだよ。浄化させない絶妙(ぜつみょう)(ちから)加減(かげん)は、真似(まね)しようにも誰にもできやしないよ」

 カイはそう言うが、とてもほめているようには思えない。

「……今日は、カイ様がいらっしゃるとは思ってもみませんでしたわ」

 神官か騎士団の誰かが来るとは聞いていたが、まさか知り合いが来るとは驚いた。

「ああ、騎士団の近衛(このえ)第一隊は、表向きはハインリヒ様直轄(ちょっかつ)護衛(ごえい)専門(せんもん)部隊だけど、一部の隊員は異形の者を取り締まる役目を(にな)っているからね。ジークヴァルト様もそのひとりだし、異形の調査でジークヴァルト様が他家(たけ)(おもむ)くことだってあるよ」
「まあ、そうなのですね」

 調査をする場所によっては、カイの身分では立ち入れないこともある。高位の貴族を相手にする場合、いかに王太子の命であってもすげなく扱われるため、ジークヴァルトのような爵位(しゃくい)の高い者が行く必要がある場合もあった。

「ちなみにアデライーデ様もそうだよ。騎士団の力ある者はたいがいその(にん)についてるかな」
「まあ、アデライーデ様も?」
「うん、今は主にバルバナス様の元で活動しているけどね」

 バルバナスは王兄(おうけい)にして大公(たいこう)の地位にある人物だ。そんな内情を部外者の自分にぺらぺらと話していいのだろうか。リーゼロッテは不安になり、カイの顔を伺った。

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