氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あの……カイ様……そのような重要なことを、わたくしに話して問題ありませんか……?」
「うん? ああ、大丈夫、大丈夫。話せるってことは言っても問題ないってことだから」
「…………?」

 言われた意味がわからない。朗らかに笑いながら言うカイに、リーゼロッテは小首をかしげた。

「そんなことより、リーゼロッテ嬢が手なづけた異形って、もしかして不動のカークの事?」
「カイ様はカークをご存じなのですか?」
「不動のカークのことは昔の調書に乗ってるからね。実際に見たことはないんだけど」
「カークなら、今、そこの廊下で待たせていますわ」
「じゃあ見せてよ。一応、視察らしいことはしとかないとね」

 ぱちりとウィンクすると、カイは扉へと向かった。先回りしていたマテアスが、すかさず扉を開く。

「ふうん? これが不動のカーク?」

 廊下に出るとカイは顎下(あごした)にこぶしを当てて、壁際(かべぎわ)直立不動(ちょくりつふどう)で立っているカークを、上から下までしげしげと(なが)めた。

「これって、何百年かずっと動かせないでいたんだよね。一体、リーゼロッテ嬢は何をしたの?」
「何をとおっしゃられましても……わたくしはただカークに、そこから動いてみないか話をしただけですわ」
「……うん? ごめん、ちょっと意味がわからない」
「カークは意地を張ってあそこから動けないでいたようなのです。ですから、もうふてくされるのはやめてみないかと声をかけたのですわ」

 カイはポカンと口を開け、その後、腹を抱えて爆笑し始めた。

 こうなったら、しばらくカイの笑いは(おさ)まらない。王城で散々(さんざん)笑われてきたリーゼロッテは、むうっと唇をとがらせた。

「ははっ、ふ、ふてくされた異形を、せ、説得……やばっ、リーゼロッテ嬢、マジでやば……はははははっ」

(王子殿下がいらっしゃれば、笑うカイ様を止められるのに)

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