氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
ほどなくして、戸惑った様子のエラがマテアスに連れられてきた。物々しい雰囲気の中、バルバナスをはじめ、騎士とエッカルトたちの視線がエラへと集まる。
「これをあの木の根元へかけてこい」
バルバナスに透明な液体が入った小瓶を渡されて、エラは困惑した様子で枯れ木に視線を向けた。みなが取り囲む木の周りは、きれいに雪が避けられている。だが、何の変哲もないただの枯れた大木だ。
晩夏から秋にかけてリーゼロッテは、よくこの木の根元近くで休憩をしていた。主にエマニュエルが付き添うことが多かったが、エラも幾度かこの場所へ足を運んだことがある。
リーゼロッテはいつもここでお茶を飲みながら、耳を澄まして時折静かにうなずいていた。小鳥のさえずりに耳を傾けるように、口元をほころばせるその様子は、まるで一枚の絵のようにエラの目には映った。
秋風が吹く頃には公爵に行くのを止められたのか、リーゼロッテはここへ行きたいとは言わなくなった。そのくらいから、リーゼロッテに何か隠し事をされているように、エラはずっと感じとっている。
「エラ様。何かおかしいと思ったら、すぐにお戻りください」
マテアスに小声で耳打ちされて、エラはこくりと頷いた。なぜこんなことを要求されているのかは皆目見当もつかないが、王族であるバルバナスの命令に逆らえるはずもない。
何の抵抗もなく円の中に入り、そのまま木に向かってすたすたと歩いていく。そんなエラを、一同は固唾を飲んで見守った。エラにはジョンが視えていないのだろうが、周りにいる者はいつ何が起こってもおかしくはないと、否応なしに緊張感が高まっていく。
木の根元まで来るとエラは一度こちらを振り返った。すぐ横にいるジョンは、動じることなくじっと上を見上げたままだ。
「そのままそこに水をかけろ」
バルバナスに言われ、エラは手にした小瓶を、木の根元に向けて傾ける。ちょうどジョンのいる足元あたりへと、液体は注がれようとした。
「きゃあっ」
「これをあの木の根元へかけてこい」
バルバナスに透明な液体が入った小瓶を渡されて、エラは困惑した様子で枯れ木に視線を向けた。みなが取り囲む木の周りは、きれいに雪が避けられている。だが、何の変哲もないただの枯れた大木だ。
晩夏から秋にかけてリーゼロッテは、よくこの木の根元近くで休憩をしていた。主にエマニュエルが付き添うことが多かったが、エラも幾度かこの場所へ足を運んだことがある。
リーゼロッテはいつもここでお茶を飲みながら、耳を澄まして時折静かにうなずいていた。小鳥のさえずりに耳を傾けるように、口元をほころばせるその様子は、まるで一枚の絵のようにエラの目には映った。
秋風が吹く頃には公爵に行くのを止められたのか、リーゼロッテはここへ行きたいとは言わなくなった。そのくらいから、リーゼロッテに何か隠し事をされているように、エラはずっと感じとっている。
「エラ様。何かおかしいと思ったら、すぐにお戻りください」
マテアスに小声で耳打ちされて、エラはこくりと頷いた。なぜこんなことを要求されているのかは皆目見当もつかないが、王族であるバルバナスの命令に逆らえるはずもない。
何の抵抗もなく円の中に入り、そのまま木に向かってすたすたと歩いていく。そんなエラを、一同は固唾を飲んで見守った。エラにはジョンが視えていないのだろうが、周りにいる者はいつ何が起こってもおかしくはないと、否応なしに緊張感が高まっていく。
木の根元まで来るとエラは一度こちらを振り返った。すぐ横にいるジョンは、動じることなくじっと上を見上げたままだ。
「そのままそこに水をかけろ」
バルバナスに言われ、エラは手にした小瓶を、木の根元に向けて傾ける。ちょうどジョンのいる足元あたりへと、液体は注がれようとした。
「きゃあっ」