氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 押し殺したような声に驚いて、アデライーデは思わずジークヴァルトの背を抱きしめ返した。

「何かあったの? おかしいわよ、あなた」
「別に何もない」

 そう言いながら、ジークヴァルトはアデライーデの頭を何度かやさしく梳いた。最後にもう一度背中をぽんぽんとたたくと、ジークヴァルトは使用人に急かされて、足早に行ってしまった。

「なんなの、一体」

 あっけにとられたままその後ろ姿を見送ったあと、アデライーデは仕方なく自室へと戻った。頭痛がひどくなりそうな気配がする。こんな時はおとなしく横になるよりほかはない。

 片目の視力を失ってからというもの、時折動けないほどの吐き気や頭痛に襲われる。

 常備薬の苦い丸薬を飲み下して、アデライーデは自室のソファで横になった。人払いを済ませ、静かになった部屋でひとり目を閉じる。
 薬が効いてきたのか、ほどなくしてまどろみがやってくる。

 ――どうか、今日はあの夢を見ませんように

 祈るように、アデライーデは緩やかにその意識を手放した。

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